「きぼう」搭載のCALETが裏付け、LIGO検出の重力波はブラックホールの合体由来

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昨年重力波が検出されたのと同じ時期に、国際宇宙ステーションの高エネルギー電子・ガンマ線観測装置「CALET」がX線・ガンマ線を観測しなかったことにより、LIGO検出の重力波がブラックホール合体由来であると裏付けられた。

【2016年10月12日 JAXA

2015年9月14日、米国のレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO(ライゴ)」によって、重力波が初めて検出された(参照:「アインシュタインの予測から100年、重力波を直接検出」)。重力波は、時空のゆがみの時間変動が波として光速で伝わる現象のことで、1916年にアインシュタインが一般相対性理論から予言したものだ。

LIGOチームは、重力波が観測された場合の発生メカニズムをより詳細に明らかにするために、重力波と同時発生が推測される電磁波(電波、可視光線、X線、ガンマ線など)の観測を他の宇宙観測チームに呼びかけており、国際宇宙ステーション(ISS)に設置された高エネルギー電子・ガンマ線観測装置「CALET(CALorimetric Electron Telescope)」もこれに協力している。

「CALET」と「きぼう」、船外実験プラットフォーム
CALETは「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに取り付けられている(提供:NASA/JAXA)

CALETは2015年8月19日に打ち上げられてISSの「きぼう」日本実験棟に取り付けられ、同年11月から観測を行っている。LIGOチームが重力波を初観測した9月14日の段階では、CALETはまだ初期検証中だったが、LIGOチームが2回目の重力波を検出した12月26日には、ちょうどCALETは重力波の到来方向と重なる視野の観測を行っていた(参照:「2例目となる重力波の直接検出、ブラックホール同士の合体で発生」)。

そこで、CALETが電磁波のシグナルを検出していなかったかどうかを調べたところ、シグナルは検出されなかった。

CALETの2種類の装置の感度マップ
CALETの2種類の装置((左)硬X線モニター、(右)軟ガンマ線モニター)の感度マップ。重力波イベントが起こった際にCALETが天球上のどの方向に対してどの程度の感度を有していたかを表しており、白や黄色のほうが高感度。LIGOの観測より重力波は緑の帯内の方向で発生したとみられているが、この帯内でCALETの感度ではシグナルが検出されなかった(出典:論文より)

2回検出された重力波はいずれもブラックホール同士の合体によるものと考えられており、その場合には電磁波の検出は難しいと予測されている。「シグナルが検出されなかった」というCALETの観測結果は、まさにそれを裏付けるのものとなった。

今後、LIGOの改良型や日本の「KAGRA」など、より高感度の観測装置が稼働すると、ブラックホールと中性子星や中性子星同士の合体で発生する重力波の観測も可能となる。こうした現象では同時にガンマ線バーストが発生すると予測されているため、CALETによる継続的観測は重力波発生メカニズムの解明に大きく貢献すると期待されている。

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