渦巻く火星の北極冠

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探査機「マーズエクスプレス」がとらえた火星の北極冠の画像には、渦巻く模様がくっきりと見えている。

【2017年2月6日 ヨーロッパ宇宙機関

火星の北極と南極は水の氷や二酸化炭素の氷(ドライアイス)で覆われており、この地形は「極冠」と呼ばれている。地球と同様に火星にも季節変化があり、冬になると二酸化炭素が固体となって1mほどの厚さの氷の層を作って、極冠が大きくなる。反対に、数か月にわたる暖かい夏の間は二酸化炭素が昇華し気体となって大気中に逃げ出すので、極冠は小さくなり、後には水の氷の層が残される。

次の画像は、ヨーロッパ宇宙機関の探査機「マーズエクスプレス」が2004年から2010年に撮影した画像から32枚をモザイク合成して作られた火星の北極冠で、100万平方kmもの領域がとらえられている。

火星の北極冠
火星の北極冠(提供:ESA/DLR/FU Berlin; NASA MGS MOLA Science Team、以下同)

極冠の形成には、強い風が時間をかけて大きな役割を果たしていると考えられている。この風は、標高が高い極冠の中心から低い端に向かって吹いていて、「コリオリの力」(地球でハリケーンを発生させる力)によってねじられる。

画像中、特に顕著で目を引くのが、長さ500km、深さ2kmの巨大な溝だ。まるで極冠を分割しているかのように見えるこの大峡谷「カズマ・ボレアレ(Chasma Boreale)」は、比較的古い地形と考えられている。氷と塵から成る渦巻く地形が形成される前からできており、新しい氷が周囲に積もっていくにつれどんどん深くなっていくように見える。

大峡谷カズマ・ボレアレ
大峡谷カズマ・ボレアレ

マーズエクスプレスによるレーダー探査などから、極冠は氷や塵の多層構造をしており、2kmほどの深さがあることがわかっている。これら多くの層は、これまでの火星の気候変動の貴重な記録である。

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