隕石中に発見された太陽系最古の新鉱物「ルービナイト」

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コンドライト隕石の化学組成や結晶構造の分析から太陽系最古の新鉱物が発見され、「ルービナイト」と命名された。ルービナイトの存在は、原始太陽系星雲中の温度や圧力、ガスの化学組成といった物理化学的条件が多様であったことを示唆するものだ。

【2017年4月13日 東北大学

太陽系の進化過程で溶融・分化を経験しなかった小惑星から飛来した「コンドライト」という隕石には、太陽系誕生直後に原始太陽近傍の高温の星雲ガスから凝縮した1mm~1cm程度の固体物質が含まれている。この「難揮発性包有物」と呼ばれる物質は揮発性の乏しいカルシウムやアルミニウム、チタンなどの元素に富んでおり、太陽系最古の固体物質として太陽系誕生直後の情報を記録していると考えられることから、太陽系の形成進化過程を理解するうえで重要な研究対象とされてきた。

近年では、分析技術の進歩で試料中の微小領域(10μm以下)の分析が可能になり、難揮発性包有物の微細組織分析から初期太陽系に関する新たな物質科学的情報が得られるようになっている。

東北大学の吉崎昂さんたちの研究グループは始原的なコンドライト隕石の一種であるアレンデ(Allende)隕石の走査型電子顕微鏡観察を行い、カルシウム、チタン、ケイ素、酸素等の元素からなる微小な鉱物を発見した。

化学組成や結晶構造の詳細な分析の結果、この鉱物はCa3Ti3+2Si3O12という化学式を持つザクロ石(ガーネット)の新種であることが明らかとなった。同じ化学式を持つ物質は既に人工的に合成されていたが、天然鉱物としては初めての発見となる。同様の鉱物はカリフォルニア工科大学のChi Maさんたちによって、別のコンドライト隕石であるヴィガラノ(Vigarano)隕石からも同時期に発見されている。

両者は共同で国際鉱物学連合の新鉱物命名分類委員会に申請を行い、新鉱物として承認され、隕石の研究で有名なAlan E. Rubin氏にちなんで「Rubinite(ルービナイト)」と命名された。

アレンデ隕石中のルービナイト
アレンデ隕石中のルービナイト(薄灰色)の電子顕微鏡写真。メリライト(濃灰色)、ペロブスカイト(白色)はいずれも難揮発性包有物中に普遍的に含まれる鉱物(提供:2017 Takashi Yoshizaki)

ルービナイトは、地球に比べはるかに還元的な環境下でしか安定に存在しないTi3+を非常に多く含む。つまりルービナイトの発見は、難揮発性包有物が凝縮した原始太陽系星雲内の環境が非常に還元的であったことを強く示唆する結果である。

難揮発性包有物に含まれる鉱物種のほとんどは、現在広く受け入れられている原始太陽系星雲内の温度や圧力、化学組成等といった物理化学的条件下で安定に存在することが、モデル計算により示されている。しかし、今回発見された新鉱物のルービナイトをはじめとするザクロ石は、このような条件下では安定して存在しないと考えられている。また、ルービナイトの産状や、スカンジウム、ジルコニウム、イットリウムなどの難揮発性元素の含有量は、アレンデ隕石中とヴィガラノ隕石中で大きく異なっていた。

これらの結果は、ルービナイトが原始太陽系星雲中で形成した際の物理化学的条件が多様であったことを示唆するものだ。今後、ルービナイトの詳細な鉱物学的、岩石学的、同位体宇宙化学的分析等を行い、熱力学計算結果等も組み合わせてこの鉱物がどのような条件下で形成したのかについて考察することで、原始太陽系星雲中の物理化学条件に新たな制約が与えられていくことが期待される。