「ガイア」が明かす45万年後のオリオン座
【2017年6月16日 ヨーロッパ宇宙機関】
私たちが普段見ている恒星は、月や惑星のように天球上を動いていくことはなく、互いの位置関係を変えることなく止まっているように思える。しかし実際には、恒星も宇宙空間の中を移動しているので、地球から見るとその位置は非常にゆっくりではあるが変化し続けている。星の見かけの動きは、宇宙空間内での星の移動速度が大きいほど、また地球に近いほど速くなる。また、たとえば地球から真っすぐ遠ざかれば見かけ上は動かないように見えるように、運動の方向も見かけの動きに影響する。
こうした星の位置や運動を高精度で観測するのが、ヨーロッパ宇宙機関が2013年に打ち上げた位置天文衛星「ガイア」だ。1989年に打ち上げられ1993年まで観測を行った同機関の衛星「ヒッパルコス」の後継機として、ガイアは10億個以上もの恒星を観測してきた。この両衛星の観測データを基にして、この先45万年でオリオン座とその周辺の星の位置がどのように変化するのかを表したシミュレーション動画が作成された。
オリオン座の赤色超巨星であるベテルギウスは、動画の序盤では中央上に見えているが、10万年も経つとこの範囲から外れてしまう。ベテルギウスは数百万年以内には超新星爆発を起こすと考えられているが、この動画では爆発は考慮していない。一方、左下に見えるオリオン座の青色超巨星リゲルは、ほとんど動かずに輝き続けている。また、三つ星の左下にあるオリオン座大星雲からは45万年の間にも多くの新しい星が生まれるはずだが、動画では星の誕生は表示されていない。
もう一つ興味深いのは、オリオン座の右にあるおうし座の星々だ。動画の序盤で右下にあるアルデバランは、時間が進むにつれて左へと移動していく。そして、ヒヤデス星団の星々はまとまって、ゆっくりと右下から左上に向かっていく。
このように、多数の星の中でも明るい星によって構成されていて形がわかりやすいオリオン座も、時間の経過とともにゆっくりと新たな形へと変化していくこと、現在の星座の形はすべて一時的なものだということがわかる。未来の人類は、どんな形の星座を夜空に描くだろうか。
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