太陽から2兆kmまで近付く星、グリーゼ710
【2017年9月7日 ヨーロッパ宇宙機関/Max Planck Institute for Astronomy】
ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」は、5年間のミッションで正確な星の位置と動きを観測し、過去から未来までの星の動きを調べることを大きな目標としている。観測が始まってからの14か月間で10億個以上の星の位置を調べ、そのうち200万個以上の星については距離と天球上の動きも測定されている。
さらにそのうち30万個以上の星について500万年にわたる動きを詳細に調べたところ、97個の星が太陽から150兆km以内に近づくことがわかった。中でも16個は太陽から約60兆km以内まで近付くが、ここまで近いと太陽系の最縁部と考えられている「オールトの雲」に影響を及ぼす可能性がある。オールトの雲は太陽から約15兆kmのところまで広がると考えられている、「彗星のふるさと」とも呼ばれる領域だ。オールトの雲の近くを星が通り過ぎると、星の重力がオールトの雲にある彗星を動かし、彗星の軌道を地球に近付くようなものへと変更するかもしれない。
16個の星のうち、現在はへび座の方向63光年彼方にある10等星のグリーゼ710は、130万年後には太陽から2兆3000億kmの距離(太陽から地球までの距離の1万6000倍)にまで接近し、夜空で最も明るい星として輝くようになる。この最接近時にグリーゼ710はオールトの雲の中を時速5万kmで通過すると予測されている。これは他の星の速度の半分ほどに過ぎないゆっくりしたスピードであり、太陽の60%ほどと軽いグリーゼ710であってもオールトの雲に影響を与えるのにじゅうぶんな時間があるだろうと考えられる。多くの彗星が雨のように太陽系の内側にやってくるかもしれない。
総合的に見ると、100万年あたりおよそ550個の星が太陽から150兆km以内に近付き、そのうち20個ほどが30兆km以内に近付くと推定される。ガイアの観測によって位置精度は向上しており、今後もデータは更新されていく。次回予定されている来年4月の更新では、およそ20倍の数の星の情報も含まれるため、2500万年もの予測が可能となるだろう。
〈参照〉
- ESA:Close encounters of the stellar kind
- Max Planck Institute for Astronomy:Heavy stellar traffic, deflected comets, and a closer look at the triggers of cosmic disaster
- Astronomy & Astrophysics:The completeness-corrected rate of stellar encounters with the Sun from the first Gaia data release 論文
〈関連リンク〉
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