天の川の中に集まって見える3星雲
【2017年6月22日 ヨーロッパ南天天文台】
チリ・パラナル天文台のVLTサーベイ望遠鏡(VST)で、わし星雲、オメガ星雲など星雲が密集している領域をとらえた画像が公開された。VSTに搭載されている大型の「オメガカメラ」を使って撮影された画像を組み合わせて一つの大きな画像にしたもので、フルサイズでは3.3ギガピクセル(横93031×縦35412ピクセル)もの画素数がある。
一番右のSh 2-54と中央のわし星雲はへび座、左端のオメガ星雲はいて座にあり、いずれも地球からはおよそ7000光年彼方にある。3つの星雲は天の川が最も濃く幅広いあたりに位置しているが、この領域には新しい星の材料となるガスや塵が大量に存在している。誕生したばかりの恒星からの強烈な光によって周囲の水素ガスがエネルギーを得て、ピンク色に光って見えるのだ。
Sh 2-54とわし星雲は、星団が発見されたあとに、ガスの雲が星団を取り巻いているのがわかったという共通点がある。
まず、Sh 2-54は1950年代にアメリカのスチュワート・シャープレスが発見したものだが、その約170年前にイギリスのウィリアム・ハーシェルが星団NGC 6604(画像右のSh 2-54の、中央下のやや明るい白い部分)を見つけていた。
わし星雲については、スイスのジャン=フィリップ・ロワ・ド・シェゾーが18世紀の中ごろに明るい星団NGC 6611(画像中央の明るく白い部分)を発見した。その数十年後にフランスのシャルル・メシエが周囲の星雲状の部分も記録し、彼が編纂したメシエカタログの16番目に収録した。
わし星雲に次いでメシエカタログの17番目に収録されているオメガ星雲は、やはりド・シェゾーが先に発見し星雲として記録している。しかし、その記録は広く知られていなかったために、メシエによって1764年に再発見された。
なおリリース元ではズーム可能な高解像度画像を見ることができる。
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