ケレスの有機物の起源
NASAの小惑星・準惑星探査機「ドーン」による探査で、準惑星「ケレス」上には有機物が1000平方kmほどの領域に広がっていることがわかっている(参照:「ケレスに有機物が存在する形跡」)。ケレスは太陽系の内部と外部の境界にあたる小惑星帯に位置しており、粘土や炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムが特徴の興味深い組成は、ケレスが非常に複雑な化学進化をしたことを示唆している。ケレスの有機物を調べると、太陽系が誕生した約45億年前に遡るケレスの起源やその後の進化、さらには太陽系内の有機物の分布などに関する理解につながる。
「ケレスの北半球にあるエルヌテト・クレーター付近には局所的に高い濃度の有機物が発見されています。この有機物はケレスの形成後に外からもたらされたものなのか、内部プロセスによって特定の場所で合成されたり濃縮されたりしたものか、どちらの説にも不足な部分があり、言わばパズルの重要な部分を見落としている可能性がありました。これまで有機物の起源について決定的な証拠は示されておらず、私たちは小惑星や彗星の衝突によって有機物がもたらされた可能性を徹底的に調べました」(米・サウスウエスト研究所 Simone Marchiさん)。
Marchiさんたちの研究チームがシミュレーションによって衝突天体の大きさや速度を調べたところ、比較的高速で衝突する彗星のような天体の場合、衝突による圧縮でほぼすべての有機物が失われることが示された。一方、低速で衝突する小惑星、特に斜めの角度から衝突する小さいものの場合、衝突前に保持していた有機物の2~3割が衝突後に残されることがわかった。しかし、ケレスに見られる有機物の分布の様子は、小惑星帯に存在する小惑星がもたらしたものとは考えにくいという。「以上の点から、有機物はケレス固有のものらしいことが示されました」(Marchiさん)。
なお、ドーンのミッションが2018年の中ごろまで延長され、引き続きケレスの周回探査が続けられることが決まった。ドーンは2007年に打ち上げられた後、2011年から2012年にかけて小惑星ベスタを探査し、その後2015年からケレスの探査を行っている。延長されたミッションでドーンは、これまでで最も低い高度を飛行して更に詳しくケレスを調べる予定だ。
延長ミッション中の2018年4月にケレスは太陽に最も近づく「近日点」を通過する。これまでの探査結果から、ケレスの氷と太陽から届く高エネルギー粒子との相互作用によって水蒸気の一部が作られるという仮説が立てられており、その水蒸気はヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星「ハーシェル」がドーンの到着前に検出した一時的な薄い大気の一部となるかもしれない。地上の望遠鏡と協力し、この現象の観測が行われる予定である。
〈参照〉
- サウスウエスト研究所(SwRI):SwRI scientists dig into the origin of organics on Ceres
- NASA JPL:Dawn Mission Extended at Ceres
〈関連リンク〉
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