青銅器時代の鉄製工芸品は隕鉄で作られていた
【2017年12月11日 CNRS】
鉄器時代は、現在のトルコの大部分にあたる「アナトリア」地方および黒海とカスピ海に面する「コーカサス」地方で紀元前1200年ごろに始まった。人類が本格的に鉄を用いるようになるのはそれ以降だが、鉄器時代よりもさらに2000年ほど前の時代からすでに、様々な文明で鉄製の工芸品が作られていた。しかし当時、鉄の工芸品は珍しい存在であった。
過去の研究により、鉄器時代以前の青銅器時代に作られた鉄製工芸品は隕石の鉄からできていることが知られていた。これが青銅器時代の鉄製工芸品の一部に限られているのか、それとも大部分を占めているのかを調べるため、フランス国立科学研究センターのAlbert Jambonさんは多数のサンプルを調査した。
Jambonさんの鉄製工芸品コレクション:
- エジプト・ゲルゼ遺跡から発掘されたビーズ(紀元前3200年頃)
- トルコ・アラジャ・ホユック遺跡から発掘された短剣(紀元前2500年頃)
- シリア・ウンム・エル・マッラ遺跡から発掘されたペンダント(紀元前2300年頃)
- シリア・ウガリット遺跡から発掘された斧(紀元前1400年頃)
- 中国・殷王朝時代(紀元前1400年頃)の複数の品
- エジプト・ツタンカーメンの短剣やブレスレットやヘッドレスト(紀元前1350年頃)
そしてJambonさんは、これら青銅器時代の鉄製工芸品はいずれも隕石の鉄で作られていることを明らかにした。
鉄の由来が隕石であることは、鉄と一緒にコバルトやニッケルが見つかるかどうかで判別できる。地球のような大きな天体が形成される際、ほとんどすべてのニッケルは溶けた鉄でできた核に向かって流れていくため、工芸品の表面にニッケルが見つかることはめったにない。一方、核にニッケルなどを含む天体が衝突で破壊されそこから隕石が誕生した場合、隕石には多くのニッケルとコバルトと共に鉄が含まれている。つまり鉄と共にニッケルなどが検出されることになり、鉄が隕石由来だとわかる。
なぜ青銅器時代の鉄製工芸品に隕鉄が使われていたのかという疑問に対する答えは簡単で、隕鉄がすでに金属の状態にあり、すぐに利用が可能だったからだと考えられる。対照的に、地球上の鉄鉱石を製錬することは困難であり利用は容易ではなかったが、その方法を人類が取得することによって鉄器時代の始まりが告げられることにもなる。地球の外からやってきた珍しい金属は、精錬技術の導入と共に鉄器時代の文化では忘れ去られ、はるかに手に入りやすい地上の鉄鉱石が利用されるようになったというわけだ。
〈参照〉
- フランス国立科学研究センター:Bronze Age artifacts used meteoric iron
- Journal of Archaeological Science:Bronze Age iron: Meteoritic or not? A chemical strategy 論文
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