月の水はやはり広く分布しているのかもしれない
【2018年2月28日 NASA】
これまでの研究では、月の水は極域に多く存在しており、水の存在を示す兆候が満ち欠けに伴って29.5日周期で変動していると推測されてきた。一部の研究者からは、月面上の水分子は動き回り、最終的に両極の低温領域「コールドトラップ」にとらえられて集まり安定的に存在するようになるという説も提案されていた。
月に水が存在する証拠は、主に月面から反射される太陽光の強さをリモートセンシングで計測することで得られてきた。水があると、近赤外線の波長域である3μm付近のスペクトルに兆候が表れるのだ。しかし同時に、月面も同じような波長の赤外線を放射しているので、反射した太陽光と月の放射した赤外線とを区別するのは難しい。これを分けるためには、温度に関するとても正確な情報が必要となる。
米・宇宙科学研究所のJoshua Bandfieldさんたちの研究チームは、NASAの月探査機「ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)」による測定値から、温度に関する詳細なモデルを作成した。そして、インドの月探査機「チャンドラヤーン1号(Chandrayaan-1)」が集めたデータに、その温度モデルを適用した。
データ分析の結果によると、発見された水は広範囲に分布していて、あまり動かないとみられる。このことから水は、H2Oよりも反応性の高いヒドロキシ基(OH)として多く存在していると考えられるという。また、H2Oも月面に緩くくっついているのではないことも示唆されている。「水の分布は時間帯や緯度に関係なく、表面の組成に左右されることもないようです。そして水は、あまり動かないようです」(Bandfieldさん)。
「月面の水やヒドロキシ基の動きやすさについて制限を与えることで、コールドトラップにどれくらいの量の水が到達できるかを限定できます」(米・サウスウエスト研究所 Michael Postonさん)。月で起こることを調べれば、月の水の源や、他の岩石天体における水の長期的な保持について理解が深まるかもしれない。
今回の研究結果は、月面に太陽風が到達することでヒドロキシ基やH2Oが形成されることを示しているが、研究者たちは月が作られたときに内部に閉じ込められたヒドロキシ基などがゆっくりと表面に出てきている可能性も否定しておらず、議論が続いている。「一部の科学的な問題は非常に難しいものです。答えを得るには、異なるミッションによる多くの観測データに頼るしかありません」(NASAゴダード宇宙飛行センター John Kellerさん)。
〈参照〉
- NASA:On Second Thought, the Moon's Water May Be Widespread and Immobile
- Nature Geoscience:Widespread distribution of OH/H2O on the lunar surface inferred from spectral data 論文
〈関連リンク〉
- LRO
- Chandrayaan-1
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:月
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