月着陸船「アテナ」打ち上げ、日本の探査車「ヤオキ」を搭載

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27日午前、日本の宇宙ベンチャー企業ダイモン社の探査車「ヤオキ」を搭載したアメリカの月着陸船「アテナ」が、米・フロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられた。

【2025年2月28日 NASA(1)(2)インテュイティブ・マシーンズ

日本時間(以下同)2月27日午前9時17分、日本のロボット・宇宙開発ベンチャーである株式会社ダイモンの小型月面探査車「YAOKI(ヤオキ)」などを搭載した米民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)社の月着陸船「Nova-C」(通称「Athena(アテナ、アシィーナ)」)が、米・フロリダ州ケネディ宇宙センターからファルコン9ロケットにより打ち上げられた。

打ち上げの様子
月着陸船「アテナ」の打ち上げ(提供:SpaceX

アテナ
アテナ。金色の俵型に見える輸送ケース「ヤオキ」が格納されている(提供:Intuitive Machines

打ち上げの約40分後、アテナはロケットの第2段から分離され、打ち上げは成功した。

アテナの自撮り写真
打ち上げ後にアテナが撮影したセルフィー(提供:Intuitive Machines

アテナはこの後約1週間かけて月まで向かい、着陸地点の上空約10kmを飛行する楕円軌道へ入る。続いて完全自律運用に移行し、3月8日に月の南極から約160km離れた地域「Mons Mouton(モンス・ムートン、ムートン山)」へ軟着陸する予定だ。この地域は、将来の有人探査ミッション「アルテミス計画」の候補地の一つとなっている。

着陸地点「Mons Mouton」
着陸地点の「Mons Mouton」(提供:NASA/GSFC/ASU/Intuitive Machines)

アテナはインテュイティブ・マシーンズ社が昨年実施した月着陸ミッション(IM-1)に続く、2回目の月着陸ミッション(IM-2)である。水氷や二酸化炭素といった地下にある揮発性物質を探査するための掘削ドリルや質量分光計、小型ローバーや「Micro Nova Hopper(マイクロノバホッパー)」(通称Grace)と呼ばれる月面を跳躍するように飛行して移動する推進型ドローンの移動性など、将来の人類の月面長期滞在を支える技術の実証を目的としている。

アテナに搭載されているヤオキ(名前は日本語の「七転八起」に由来)は、超小型、超軽量、高強度を兼ね備えた小型月面探査車で、NASAの「商業月貨物輸送サービス(CLPS)」プログラムの一環として、月の南極地域に重要な商業・民間インフラサービスを提供するペイロードのうちの一つに採択されたものだ。ヤオキはアテナ着陸の約5日後に月面に展開された後、地球からのリモート操縦によって着陸地点から半径50mの範囲を走行しながら画像を取得し、データを地球へ送信するというミッションを行う。ダイモン社ではヤオキの月面活動について、民間主導の宇宙探査が実現可能であることを示す重要な機会と考えている。

打ち上げ前のヤオキ
打ち上げ前のヤオキ(提供:株式会社ダイモン(IM-2 Press Kit))

アテナのペイロードには月面初のモバイル通信ネットワークシステムであるフィンランド・Nokia社の月面向け4G/LTEネットワークも搭載されており、アテナを基地局としてGraceと米・民間企業ルナー・アウトポスト(Lunar Outpost)社の小型探査車「MAPP(Mobile Autonomous Prospecting Platform)」との間での通信テストが実施される。こうした様々な技術実証を行うIM-2ミッションは、着陸の約10日後、着陸地点が夜を迎えるまで実施される。

IM-2ミッションの月面活動の想像図
IM-2ミッションの月面活動の想像図。(左から)Grace(Hopper)、月面向け4G/LTEネットワークとNASAの採氷ミッション「PRIME-1; Polar Resources Mining Experiment 1」のドリルと質量分析計を搭載したアテナ、ヤオキ、MAPPが描かれている(提供:Intuitive Machines

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