月着陸船「ブルーゴースト」月面着陸に成功、民間では世界2例目

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3月2日、米・民間企業ファイアフライ・エアロスペース社の「ブルーゴースト」が月面へ着陸した。民間企業による着陸は、米・インテュイティブ・マシーンズ社の「オデュッセウス」に続いて世界で2例目となった。

【2025年3月3日 ファイアフライ・エアロスペース

今年1月15日に打ち上げられた(日本時間、以下同)アメリカの民間企業ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)社の月着陸船「ブルーゴースト(Blue Ghost)」は、地球周回軌道から月遷移軌道、月周回軌道へと順調に飛行を続けてきた。

3月2日の着陸の1時間ほど前にブルーゴーストは高度100kmから20kmまで降下し、秒速約1700mから40mまで大幅に減速した。その後さらに秒速1mまで減速し、ナビゲーションシステムで着陸地点内の安全な場所を選択して、17時35分ごろに月の北東半球にある「危難の海」内の「ラトレイユ山」(Mons Latreille)の近くに軟着陸した。
ブルーゴーストの着陸地点
(左)危難の海の位置(白い丸)、(右)ラトレイユ山付近。四角内がブルーゴーストの着陸地点(提供:(左)NASA、(右)NASA/GSFC/Arizona State University

月面着陸のインフォグラフィック
ブルーゴーストの月面着陸運用のインフォグラフィック。画像クリックで表示拡大(提供:Firefly Aerospace

民間企業の着陸機による月面着陸の成功は、昨年2月の米・インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)社の月着陸機「オデュッセウス(Odysseus)」に続く2例目となる。ただし「オデュッセウス」は横転しての接地だったため、ファイアフライ・エアロスペース社は「完璧な月面着陸に成功した史上初の民間企業となった」とXに投稿している。

ブルーゴーストが撮影した画像
着陸後にブルーゴーストが撮影した画像。(左)着陸後に最初に取得した1枚。月の表面と着陸船のRCSスラスター(中央)がとらえられている(右側の青白っぽい部分は太陽光が入ったことによる白飛び)。(右)月面上に映るブルーゴーストの影と地平線上の地球。画像クリックで表示拡大(提供:Firefly Aerospace

今回のブルーゴースト・ミッション1は、NASAの商業月ペイロード・サービス(CLPS)構想の一環として、10個の科学観測機器を月面に届けることを主な目的としていて、これら観測機器の運用が今後約2週間にわたって月面で実施される。また、ブルーゴーストは3月14日に「地球による日食」(地球から見ると皆既月食)の撮影、16日には日没の撮影をそれぞれ予定している。

ブルーゴーストに搭載されている観測機器
ブルーゴーストに搭載されている観測機器。画像クリックで表示拡大(提供:Firefly Aerospace

ファイアフライ・エアロスペース社では2026年と2028年に、ブルーゴースト・ミッション2と3を予定している。ミッション2では月の裏側に着陸機を着陸させ、10種のペイロードを月に届けて10日間稼働させる。また、ミッション3では「雨の海」の西端にあるドーム地形「グルイテュイゼン(Gruithuisen)」付近に着陸し、探査車を展開する計画だ。今回の着陸成功は将来のミッションやCLPS構想への大きな弾みとなるものであり、ファイアフライ・エアロスペース社は「月でのこの小さな一歩は商業探査における大きな飛躍を意味する」と力強く語っている。

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