日本初の民間月着陸船、打ち上げ成功

このエントリーをはてなブックマークに追加
日本の宇宙企業ispaceによる月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船が、12月11日に打ち上げられた。民間初の月面着陸を目指し、順調に航行を始めている。

【2022年12月12日 ispace(1)(2)

12月11日16時38分(日本時間、以下同)、日本の宇宙スタートアップ企業「ispace」が開発した小型月着陸船を載せて、スペースX社のファルコン9ロケットが米・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。この月着陸計画はispaceによる月面探査プログラム「HAKUTO-R」の「ミッション1」に位置づけられている。

当初の打ち上げ予定日は11月28日だったが、天候不順やロケットの追加点検作業などのため2度にわたって延期が続いていた。

「HAKUTO-R」ミッション1の小型月着陸船の打ち上げ
「HAKUTO-R」ミッション1の小型月着陸船の打ち上げ(提供:ispaceリリース)

打ち上げのおよそ45分後にロケットから月着陸船が分離され、無事に所定の軌道へ投入された。その後、東京・日本橋にあるispaceの管制室との間で安定した通信も確立され、続いて電源供給や飛行姿勢が安定していること、および基幹システムに不備がないことも確認された。これによりispaceはミッション1の初期クリティカル状態が完了したと発表している。

ロケットから分離された「HAKUTO-R」ミッション1の小型月着陸船
ロケットから分離された「HAKUTO-R」ミッション1の小型月着陸船(提供:ispace HAKUTO-R Mission 1: Launch Live Stream

この後、月着陸船は燃料の消費を抑えながらゆっくり月を目指す。最初の1か月で地球から月より4倍ほど遠い約150万kmまで達した後、2か月以上かけて月周回軌道に投入される。そして来年4月に月面の「氷の海」南東にある直径87kmのアトラス・クレーターへの着陸に挑む。これが成功すれば、民間機として世界初の月面着陸となる。

ispaceは、2007年から2018年にかけて開催された月面無人探査コンテスト「Google Lunar X Prize」に「チームHAKUTO」として参加していた。月探査車(ローバー)を開発したものの、打ち上げロケットの調整がつかず、2018年に一旦はチャレンジを断念した。コンテスト自体も月に到達する勝者がいないまま終わっている。だが、計画の続行を模索し続けたispaceは同年にスペースX社との間で打ち上げの契約を締結。初心に立ち返ってHAKUTOを「Reboot」(再起動)するという思いでプログラム名も「HAKUTO-R」とした。

HAKUTO-Rミッション1では、着陸技術の検証とともに、信頼性の高い月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化も目指している。2024年打ち上げ予定のミッション2ではローバーによる月面探査を行い、ミッション3では月面着陸や輸送の精度を高めてNASAの「アルテミス計画」にも貢献する計画だ。

今回打ち上げられた月着陸船は展開時の幅2.6m、高さ2.3m、燃料を除いた質量約340kgとコンパクトだ。また、ランダー上部にペイロードとしてJAXAとタカラトミー等が共同開発した変形型月面ロボット「SORA-Q」や日本特殊陶業が開発した固体電池、UAEの月面探査ローバー「Rashid」、カナダの民間企業によるコンピューターやカメラ、クラウドファンディング支援者のネームプレート、応援歌などを収めたミュージックディスクを搭載している。

「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船のイラスト
「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船のイラストと搭載された7つのペイロード(提供:ispaceリリース)

〈参照〉

〈関連リンク〉