民間月探査レース「Google Lunar XPRIZE」、月着陸達成チームなく終了

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史上初の民間チームによる月面無人探査コンテスト「Google Lunar XPRIZE」は決勝に残っている5チームのすべてが期限までに月着陸を達成できない見通しとなり、期限を延長せずに終了することが決まった。

【2018年1月24日 XPRIZE財団

「Google Lunar XPRIZE」はXPRIZE財団が主催し、Googleをタイトルスポンサーとして2007年に始まった民間チームによる月面無人探査コンテストだ。2018年3月31日までに月面に探査機を着陸させ、月面を500m以上走行して高解像度画像などのデータを地球に送信することに成功したチームには、グランプリとして賞金2000万ドルが贈られる。

Google Lunar XPRIZEのイメージ画像
Google Lunar XPRIZEのイメージ画像(提供:XPRIZE Foundation)

現在、米国の「Moon Express」、国際共同チームの「Synergy Moon」、日本の「HAKUTO」、イスラエルの「SpaceIL」、インドの「TeamIndus」の5チームが決勝に進んでいる。Moon Express、HAKUTO、Team Indusは、着陸システムや月面走行技術、月面画像を撮影・送信する技術を実証したとして、このコンテストの「地上マイルストーン賞」を既に受賞している。

昨日23日にXPRIZE財団の創設者Peter H. Diamandisさんと同財団CEOのMarcus Shinglesさんの連名で発表された声明によると、現在決勝に残っている5チームとも、資金面での問題や技術的課題を抱えていたり、ロケット打ち上げ事業者との契約交渉が進展していないといった状況にある。そのため、月到達の期限である今年の3月31日までにどのチームも探査機の打ち上げを行えない見通しとなり、期限の延長はせずに現体制でのコンテストは終了されることとなった。

日本の「HAKUTO」は「TeamIndus」と相乗りでインドのPSLV-XLロケットでの打ち上げを予定していたが、両チームとインド宇宙研究機関の間で締結された打ち上げ契約が今年に入ってキャンセルされたため、打ち上げの見通しが立っていない。

「HAKUTO」の月面探査ローバー「SORATO」
「HAKUTO」の月面探査ローバー「SORATO」(提供:HAKUTO)

XPRIZE財団では、Googleに代わるスポンサーを探したり、賞金なしの新たなコンテストとして企画を続行するなどの可能性を現在検討している。

現体制でのコンテストは終了するものの、このコンテストを通じてこれまでに総額3億ドル以上の資金調達が実現し、インド・マレーシア・イスラエル・ハンガリーでは初の民間宇宙企業が設立された。また「Moon Express」チームが民間として初めて地球周回軌道外と月に宇宙機を送る認可を米国政府から受けるなど、各国の宇宙開発行政の規制改革にもこのコンテストは貢献してきた。両氏は声明で以下のように述べている。

「結論としては、月着陸は『信じがたいほど難しい』ものです。もしXPRIZEで私たちが立ち上げるどのコンテストでも常に勝者が出るとすれば、私たちにはまだ独創性が足りていないということになります。私たちはこれからも、文字通りの、また比喩としての『ムーンショット』となるような、可能性の限界線を押し広げるコンテストを企画し続けます」。