嫦娥6号、月の裏側のサンプルを携え地球に帰還

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6月25日、中国の探査機「嫦娥6号」が月の裏側で採取した岩石や砂などのサンプルを地球に持ち帰った。人類が月の裏側のサンプルを手に入れるのは初めてだ。

【2024年6月26日 中国国家航天局

中国国家航天局(CNSA)は、探査機「嫦娥6号」が月の裏側で採取したサンプルを搭載した帰還機が、6月25日15時07分(日本時間、以下同)に中国・内モンゴル自治区の四子王旗に帰還したと発表した。月の裏側からのサンプルリターン成功は世界初だ。

着陸した帰還機
目標エリアに着陸した帰還機(提供:CNSA Watcher

嫦娥6号は5月3日に打ち上げられ、5月8日に月周回軌道に入った。その後、6月2日に着陸機が月の裏側の南極エイトケン盆地にあるアポロクレーターの南部に着陸した

着陸後間もなくサンプル採取の準備が始まり、その日のうちに2時間ほどかけて、ロボットアームやドリルを使い、地表や地中から岩石などのサンプルを採取したほか、翌3日にかけて月面での探査活動を実施した。

月面上の着陸機とサンプル採取の様子
(左)6月3日に着陸地点で撮影された嫦娥6号の着陸機。着陸機から分離された移動型カメラで撮影。(右)ロボットアームによるサンプル採取の様子(提供:(左)中国国家航天局、(右)CNSA Watcher

4日に一連の月面活動が完了すると、サンプルコンテナを搭載した上昇機が月面を離れた。6日には月周回軌道上で待つ周回機と上昇機がドッキングし、上昇機のサンプルコンテナが周回機に搭載されている帰還機へと移された。中国の探査機が月周回軌道で周回機とのランデブーとドッキングを果たしたのは、2020年に史上3か国目となる月サンプルリターンを成功させた「嫦娥5号」以来、2度目だ。

帰還機と周回機は月周回軌道に13日間滞在した後、地球への帰路についた。地球帰還当日の6月25日14時20分、南大西洋上約5000kmの高度で帰還機は周回機から分離された。

月から帰還する宇宙機は第2宇宙速度(秒速11.2km)に近い高速で大気圏に突入するため、普通の地球周回軌道からの帰還に比べて高い温度にさらされ、より高度な耐熱技術が必要になる。そこで、嫦娥6号の帰還機は同5号と同じく、大気圏突入を2回行う「スキップ・リエントリー」という技術を使った。一般的な「再突入回廊」よりも浅い角度で1度目の大気圏突入を行い、大気層によってわざと大気圏外へはじき飛ばされて高度を上げた後、2度目の大気圏突入で地上に降りる。こうすることで、大気による減速を2回に分けて長く行い、加熱による負荷をやわらげることができる。スキップ・リエントリーは旧ソ連の「ゾンド」シリーズなどで行われたが、アポロ計画や「はやぶさ」「はやぶさ2」などではこの手法は使われていない。

嫦娥6号の帰還機は14時41分に大西洋上空約120kmで1回目の大気圏突入を行い、減速しながら所定の高さまで降下した後、インド洋の上空で大気圏外に飛び出し、再び落下して2回目の大気圏再突入を実施した。

帰還機は高度約20kmまで降下した時点でパラシュートを開く姿勢に移り、高度約10kmでパラシュートを展開して、15時07分に着陸エリアへ正確に着陸した。

降下する帰還機、着陸した着陸機
パラシュートで降下する帰還機(提供:CNSA Watcher

地上で待機していた回収チームは位置情報をもとに帰還機を発見し、機体が正常であることを確認した。その後帰還機は回収され、サンプルコンテナと搭載機器の取り出しを行うために北京市へ空輸された。

中国では、2020年12月に嫦娥5号が1.731kgもの月のサンプルを持ち帰り、人類史上44年ぶりの快挙を成し遂げた。嫦娥6号も5号と同様に2kgのサンプル採取を予定していたことから、それに近い量の月の岩石や砂が得られた可能性がある。史上初めて月の裏側からもたらされたサンプルを分析することで、月の起源や進化の理解につながる知見が得られると期待される。

帰還機の状態確認などの様子
(左)帰還機の状態確認などの様子。(右)北京への空輸に向けて吊り上げられる帰還機(提供:CNSA Watcher(左)(右)

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