月着陸船「ブルーゴースト」ミッション終了、日食撮影など目標を100%達成

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3月2日に月面に着陸した宇宙船「ブルーゴースト」は、月面で日食の撮影などを含む14日間の月面活動を計画通りにこなし、掲げられていた全目標を達成して17日にミッションを終了した。

【2025年3月19日 ファイアフライ・エアロスペース(1)(2)

1月15日(日本時間)に打ち上げられたアメリカの民間企業ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)社の月着陸船「ブルーゴースト(Blue Ghost)」は、3月2日に月面着陸に成功した。

着陸後まもなく、ブルーゴーストはトップデッキ上にマストを設置し、広角レンズカメラで地球を撮影した。

ブルーゴ-ストが撮影した地球
月面着陸後にブルーゴ-ストが撮影した地球(提供:Firefly Aerospace)

また、月の砂のサンプルを採取するシステムが加圧窒素ガスを使って砂の採取と移送と選別を行ったり、地下熱を調べる計測機器が1m弱の深さ(月面探査としてはこれまでで最も深い)まで掘削するなど、搭載されていた10の機器がそれぞれデータを取得したり探査を行ったりした。

14日には地球からは皆既月食が見られ、ブルーゴーストはこの様子を月面から「皆既日食」として観測した。民間の着陸船が月面で皆既日食を観測したのは今回が初めてのことだ。ブルーゴーストは、地球が太陽を隠している様子や「ダイヤモンドリング」のような現象、さらに地球の大気で屈折した太陽光により赤く染まった自身の太陽電池パネルなどを撮影した。また、日食の間の塵や放射の変化の観測も実施した。

ブルーゴーストが撮影したダイヤモンドリングと同時刻にハワイや南北アメリカで見られた皆既月食
(左)ブルーゴーストが撮影したダイヤモンドリング、(右)同時刻に地球から撮影した皆既月食(提供:Firefly Aerospace/NASA

ブルーゴーストが撮影した日食
ブルーゴーストが撮影した日食。太陽の上の明るい光点は金星で、その左に水星も小さく写っている(提供:Firefly Aerospace

ミッションの最終日には日没時の撮影が実施された。月面では日の出や日没時に地平線が明るくなる現象「月の地平線の輝き(Lunar Horizon Glow)」が観測されていて、これは太陽の影響を受けて月のごく薄い大気中の塵の粒子が地平線に沿って浮遊することで起こると考えられている。今回の撮影画像は現象のメカニズム解明に役立てられるものとなる。

ブルーゴーストが日没時に撮影した画像
ブルーゴーストが日没時に撮影した画像。(左)日没時にとらえられたブルーゴーストと地平線上に浮かぶ地球(画像中央)、(右)月面に落ちるブルーゴーストの影とラトレイユ山(ブルーゴーストの影の右上端)。画像クリックで表示拡大(提供:Firefly Aerospace

17日に最後のデータを受信し、掲げられていた全目標を達成して、14日間にわたったブルーゴーストの月面活動が終了した。ブルーゴーストは昼間に346時間、夜にかけても5時間稼働し、これは月着陸船の商業運用としては史上最長となった。「ミッションを支援してくださったNASAのCLPS(商業月ペイロード・サービス)と現在の米国政権に心から感謝します。月、火星、そしてその先へ向かう将来のミッションを支える科学観測や技術を実証できたことを名誉に思います」(ファイアフライ・アエロスペース社CEO Jason Kimさん)。

ファイアフライ・アエロスペース社は来年に「ブルーゴースト・ミッション2」の実施を予定している。ミッション2では着陸船と通信用の周回衛星を月に送り込み、月周回軌道や月の裏側での展開・運用を行う計画だ。これらを搭載して月まで運ぶ輸送船「エリトラ・ダーク(Elytra Dark)」は、様々なミッションをサポートする永続的な軌道上インフラとして機能するよう設計されている。

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