月着陸船「アテナ」と探査車「ヤオキ」、月面活動を早期終了

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3月7日に月面に到達した着陸船「アテナ」は姿勢が横倒しとなったとみられ、発電が不十分であるためにミッションは早期終了となった。しかし、探査車「ヤオキ」が輸送ケース内から月面を撮影するなど、いくつかの成果は得られている。

【2025年3月10日 株式会社ダイモンNASA

日本時間(以下同)3月7日午前2時30分ごろに月面へ到達した米民間企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)社の着陸船「アテナ」は、着陸目標地点「ムートン山」から約250m(※NASAは400mと発表)離れたクレーター内で横転した状態にあることが確認された。

着陸後に「アテナ」が撮影した画像
月の南極にあるクレーター内から「アテナ」が撮影した画像。白い部分は掘削ドリルが展開された状態の実験装置「PRIME-1」。遠くに地球も見える(提供:Intuitive Machines

横倒しになったアテナの太陽光パネルによる発電が十分ではないことから、運用チームは日本の小型探査車「ヤオキ」を含む全てのペイロードに対して、予定を早めて着陸直後からミッションを実施するよう指示した。

この指示を受けた「ヤオキ」は、本来は着陸の約5日後に輸送ケースから月面へと展開される予定だったが、着陸直後にケース内から月面を撮影した。また、車輪の回転を実施して、月面に降り立っていれば走行が可能だったはずであることも示したほか、様々なテレメトリーデータも取得した。こうした画像撮影や動作確認により、「ヤオキ」は日本の民間企業としては初の月面到達と月面での稼働を達成した。

「ヤオキ」が撮影した画像
「ヤオキ」が輸送ケース内から撮影した画像。左上の明るい部分はクレーターの縁(提供:株式会社ダイモン

「このような過酷な環境下でのYAOKIの性能は、設計の正確性、素材の耐久性と、ダイモンおよび全てのパートナーの技術力、そして確固たるチームワークの証です。数々の課題に直面しながらも、小型民間ローバーとしての月面運用を成功させ、技術的マイルストーンを達成することができました。Project YAOKIに関わってくれた、全ての関係者、パートナーの皆様に心から感謝します。また、YAOKIは月のクレーターの中で(アテナが)倒れた状態でも元気に機能し、“七転びYAOKI”を文字通り実現できたことを誇りに思います」(「ヤオキ」を開発したダイモン社の代表取締役 中島紳一郎さん)。

一方、着陸後「アテナ」は着陸地点を撮影した後、実験装置「PRIME-1(Polar Resources Ice Mining Experiment 1)」の動作実証に成功した。ミッション全体は、PRIME-1を含む稼働した一部のペイロードのデータ収集が完了すると、予定より早い8日午前3時15分に終了が宣言された。

将来の有人月面探査に向けたNASAの商業月面輸送サービス(CLPS)では、月の裏側や南極地域を含む月の様々な場所に50以上の着陸船や観測機器を送るミッションを計画しており、今回のミッションIM-2を実施したインテュイティブ・マシーンズ社では2026年にIM-3ミッション、2027年にIM-4ミッションを予定している。「IM-2ミッションの結果は残念でしたが、今後も、月面に着陸して活動するという非常に困難なタスクに取り組む民間企業の支援に引き続き尽力します」(NASA科学ミッション局副長官 Joel Kearnsさん)。

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