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天文雑誌『星ナビ』連載中「新天体発見情報」

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145(2017年3〜4月)

2017年10月5日発売「星ナビ」2017年11月号に掲載

わし座の新星状天体=PNV J18593500-0819370

本誌8月号のさそり座新星の中でお話した水戸の櫻井幸夫氏に半年以上もメイルが届いていないことが判明した件ですが、3月10日17時20分に氏から「このたびは、当方のメイル・トラブルで大変ご迷惑をおかけしております。2月16日の新星状天体(番号登録小惑星(40)番との見誤り)につきましては、あわててMPチェッカーに入れる数値を間違ってしまい、この小惑星と気づかず誤報告となってしまいました。すみませんでした。ところで、先日、お叱りを受けた後、受信できない原因についてネットで調べてできる範囲の対策を講じてみました。しかし、今回、中野さんからメイルのコピーを送付していただいて愕然としました。3月2日付のメイルが対策後にもかかわらず受信できていなかったからです。改めて昨日からまたネット検索をして原因を調べてみましたがわかりません。板垣さんを始め、他の方からのメイルは送受信とも問題なくできているのですが……。中野さんから最後に受信できたのは、昨年の3月16日にGreenに送ったメイルのカーボンコピー(CC)です」という報告が届きます。

その櫻井幸夫氏から3月31日05時54分に「2017年3月31日03時37分にNikon D7100と180mm f/2.8レンズを使用して各10秒露光で、わし座とたて座の境界近くを撮影した画像から11.5等の新星らしき天体(PN)を見つけました。この星は、2枚の画像に写っていますが、3月29日早朝に撮影した画像上には、その姿がありません。なお、変光星につてはGCVSカタログで、小惑星についてはMPチェッカーで調べましたが、該当するものはありません。写りの悪い画像(1.7×1.1°)で恐縮ですが添付いたします。今回からメイルのアドレスを変更しました」という報告が届きます。氏の報告は、06時36分に天文電報中央局(CBAT)のダン(グリーン)に送付しておきました。その報告には、すぐ近くに14.5等星があることをつけくわえておきました。

すると、07時51分に嬬恋の小嶋正氏から「櫻井さんのPNですが、200mmレンズで撮影した今朝の画像を調査してみました。04時26分に撮影した画像上には、発見位置近くに13等級の天体を確認できません。その画像をお送りします。再確認していただければ幸いです。なお、極限等級は13.5等級です」という連絡があります。櫻井氏からは、11時37分に「未確認天体確認ページ(TOCP)への掲載ありがとうございました。いつも迅速な対応をいただき感謝いたしております。DSS(Digital Sky Survey)の画像を見ると、ご指摘のとおり該当位置には確かに暗い星があります。しかし、過去にも既知の星のすぐそばに出現したこともあるので、もしやと思い報告いたしました。なお、手数をおかけして恐縮なのですがメイルの受信が可能かどうか確認したく、新しいアドレス宛に返信いただければ幸いです」というメイルが届きます。また、香取の野口敏秀氏からは、15時11分に「PNの情報ありがとうございます。香取は、悪天候で週明けまで回復が期待できません。確認できましたら報告いたします」という連絡があります。

その日(3月31日)の夕方、櫻井氏から届いていた画像から新星状天体の出現位置を測定して18時34分にダンに報告しておきました。PNの光度は11.7等で、その出現位置は、前述の恒星(14.5等)から約2″以内に一致していました。20時40分には、再び、小嶋氏から「今朝、お送りした画像とTOCPに掲載された発見画像と比較したファイルをお送りします。それと、135mmレンズで撮影した画像も確認してみました。私の約30分後の画像には写っていませんでしたが、バックにやや赤い15等級の星がありますので、フレア星の可能性もあると思います」という結果が届きます。氏には、23時34分に『あなたの画像を見たのですが、何もないのが不思議ですね。まぁ、2枚の発見画像があるということなので、ちょっと、様子を見てみましょう。なお、TOCPに書いたとおり、星表には14等級の明るい星が同じ位置にあります』という返信を送っておきました。

4月1日14時46分になって、櫻井氏から「小嶋正さんの画像によって新星でないことが判明し、少々、気落ちしております。それにもましてがっかりしたのは、またしても中野さんからのメイルが受信できなかったことです。小嶋さんや野口さんが中野さんあてに送ったメイルのCCはちゃんと受信できているのです。なんとも不思議でなりません。本日、[biglobe]に加えて[ocn]でも送受信できるように設定してみました。お手数をおかけしますが、改めてこのメイルにご返信いただければ幸いです」という要望が届きます。そこで4月2日01時39分に『そんなことやっても、無駄だと思います。ご自身のメイル設定がおかしいのでしょう』という返答を送っておきました。ところがその日の朝、08時22日に氏から「返信ありがとうございました。受信できました! これでやっと正常に戻りました。お世話になりました。ありがとうございました」というメイルが届くではありませんか。『えぇ、そうなの……』と思いながら氏からの返信を見ました。

なお、その後に行われた確認観測でも「この新星状天体は確認できない」という複数の報告がありました。このため、近くにあった恒星が若干増光したために撮影されたのか、小嶋氏のいうフレア星であったか、定かではありません。ただ、櫻井氏は、これまでに13個もの新星を発見しています。そのように熟練した発見者でも、このようなできごとが起こります。つまり、世間で思われているほど、新星発見は、それほど簡単なものではないのです。

へびつかい座の変光星V2928 Oph=PNV J17250160-1708345

4月3日12時53分に同じく新星を7個も発見している津山の多胡昭彦氏から「誠に久しぶりですが、お変わりなくご健勝のことと思います。さらに久しぶりの問い合わせです。細々と生きている証拠にもなるかと思います。しかし、84才ともなれば、ご迷惑をかける可能性が大きいですが、よろしくお願いをいたします」という近況に続いて「今朝02時34分頃にCanon EOS 5D+105mm f/4.0レンズを使用して25秒露光でへびつかい座を撮影した3枚の画像上に疑問天体像が写っていました。発見光度は11.5等です。一応、私なりに小惑星と変光星を調べましたが、該当するものはありません。ただ、出現位置近くには14.9等の恒星がありますが、暗いために連絡することにいたしました。なお、最近にこの位置を撮影した画像はありません」という報告がありました。

その日の夜になって、この星の確認のために山形の板垣公一氏らに多胡氏のメイルを送付しました。21時30分には、美星の綾仁一哉氏からメイルがあります。そこには「多胡さんから、発見報告が中野さんにも届いていることと存じます。残念ながら、美星天文台の分光器のコントローラーがトラブル中で、すぐには分光観測ができない状況です。多胡さんにもお知らせした上で、倉敷の藤井さんに分光観測を依頼しています。取り急ぎ、お知らせいたします」とありました。そこで、21時38分に綾仁氏に『ご連絡ありがとうございます。実は、先ほど起きたところです。TOCPに入っていませんが、私の方で入れておきます。このメイルのあと、もう一度、TOCPを見て、まだならばですが……。最近、不発が多いのですが……』という返信を送り、ダンにこの発見を伝えておきました。

ところが…です。22時01分に板垣氏から「この星は、AAVSOのサイトにあるとおり、へびつかい座にある変光範囲が10.9等から14.8等の変光星V2928だ」という連絡があります。そこで、このことを関係者に伝えました。板垣氏からは、4月4日00時17分に「多胡さん撮影直前の私の捜索画像です。一応、多胡さんに確認してもらってください」と氏の捜索画像が送られてきます。さらに嬬恋の小嶋正氏からも、01時45分に「私の4月3日朝の画像を比較してみました。右の画像の矢印が板垣さんの指摘の位置にある天体です。11.3等でした」と報告もあります。そこで01時48分に『チェックをありがとうございます。最近、こういうのが多いですね』という返信を送っておきました。

その夜が明けた4月4日09時52分には、多胡氏から「昨日の問い合わせの件、ご連絡ありがとうございました。この件について、手持ちの資料等に変光星の記載がなかったために、問い合わせをいたしました。今後の注意事項の一つといたします」というメイルが届きました。なお、本誌9月号で紹介した「木星の第VI衛星ヒマリア」の観測が板垣氏から届いたのは、これから約20時間後のことです。

こぎつね座の矮新星=PNV J20422233+2712111

3月下旬には、各地から桜が満開になったという便りが届きます。しかし、ここサントピア・マリーナの桜が満開になったのは、4月上旬遅くでした。この頃には、ガーデンテラス(中庭)にあるグミの木やアケビも小さな花をつけていました。『今年も、実がなるなぁ……』と思いながらそれらを眺めていました。さらに本誌5月号でお話した琉球アサガオも冬を越した枝から新芽が出てきました。ハイビスカス大輪は、種から育て2年が経過したものも含め、根っこから新芽が出てきました。やっと『春が来た!』と叫びたい気分です。

4月14日04時51分に嬬恋の小嶋正氏から「今、こぎつね座に発見した新星状天体を報告しました」という連絡が携帯にあります。コンピュータの前に戻ると、すでに04時14分に掛川の西村栄男氏から同じ星の発見が「新天体でしょうか」という表題のついた1通のメイルで届いていました。そこには「2017年4月14日02時40分にCanon EOS 5Dに200mm f/3.2レンズを装着して10秒露光でこぎつね座を撮影した3枚の捜索画像上に11.1等の新星状天体を見つけました。この星は、4月4日と12日に同星域を撮影した極限等級が13等級の画像上には見られません。AAVSOのサイトと2MASSカタログ、MPチェッカーでは出現位置に星はありません」という発見報告がありました。

さらに04時33分には、同じく掛川の金子静夫氏からも「4月14日03時06分にCanon EOS 6D+200mm f/2.8レンズを使用して10秒露光で撮影した6枚の画像上に11.1等のPNを発見しました。4月11日に撮影した画像上には、この星はありません。極限等級は14等級です。カタログ等を調査の結果、発見位置には明るい星はありません」という報告も届いていました。そして、小嶋氏からの報告が04時50分にありました。氏のメイルには「02時50分にCanon EOS 6D+200mm f3.2レンズで4秒露光で撮影した3枚の画像上に10.5等のPNを見つけました。この星は、4月6日に撮影した画像上には13.5等級以下で写っていません」と報告されていました。『3か所から独立して発見報告が届いた。これは、きっと新星だろう……』と考え、ダンへの報告文を作成していた04時57分に金子氏、05時06分に西村氏から携帯に連絡が入ります。そこで『3名の方からほぼ同時に発見報告があって、今、CBATへの報告を作成しています』と返答しました。その間にも、西村氏から04時55分、04時57分、04時59分、小嶋氏から05時05分に発見画像等が届きます。それらを取り入れて、ようやく、ダンにこの報告を伝えたのは、05時51分になってしまいました。

これで一安心……とテレビを見ていると、携帯が鳴ります。水戸の櫻井幸夫氏です。『えっ、櫻井さんも見つけたのか』と思いながら、携帯を取ると氏は「PNを見つけました。今、メイルを送りました」と話します。『こぎつね座でしょう。それは、西村、金子、小嶋さんから先ほど連絡があって、CBATに報告しました。その報告から30分も経っていませんから処理しておきます』と答えました。櫻井氏からの報告は06時10分に届いていました。氏の報告には「4月14日03時33分にこれまでと同じ機材でこぎつね座を撮影した2枚の捜索画像上に11.1等のPNを見つけました。この星は、4月10日に撮影した2枚の画像上には写っていません」と書かれてありました。櫻井氏の発見を伝えるために報告を作成していると06時19分には、小嶋氏から報告を受け取ったという確認のメイルが届きます。それを見てから、櫻井氏の発見は06時19分にダンに送付しておきました。再び『4名もの捜索者から同一発見の報告があった。これは、きっと、新星だろう……』と思いました。

06時32分には、金子氏から4月14日03時50分頃に行われた6個の光度観測が届きます。氏のメイルには「TOCPへの掲載ありがとうございます。後送としました発見画像を添付いたします。撮影した6枚の光度測定値は、以下のとおりでした。今回、3人のほぼ同時報告だったのですね。電話が使用中で3回目で繋がりました。いつもながら、素早いご対応をしていただき、私のメイルからは、わずか1時間ほどでTOCPへの掲載を見ることができました。メイルしようと思ったら、櫻井さんも発見されてたのですね……。4人でしたか。これで、今日は安心して過ごすことができます」という便りもありました。なお、氏の光度観測は、06時46分にダンに伝えておきました。

07時37分には、小嶋氏より追加情報として「発見同日、少し前に赤外線フィルター装着の画像を調査しましたが写っていません。新星の場合は、このフィルターに同じかやや明るく写る場合が多いので矮新星でしょうか」というメイルが届きます。さらに08時42分には、櫻井氏から「CBATへ独立発見として報告していただきありがとうございます。それにしても、ほかの方々の報告は早いですね。私が撮影終了後、この天体に気づいたのは05時09分です。それから過去画像を調べたり変光星や小惑星や彗星等のチェックをしたあと、報告文の作成を終えたのが05時50分。さらに発見画像の作成に20分ほどかかりました。これでも自分としてはいつもよりは早かったのですが……。今回も、ノイズではないかと思いつつ報告しましたが、本物だったのでほっとしています」というメイルも届きます。

さて、この日(4月14日)は、広島から友人二人が訪れます。緊張してか眠れないために14時27分に『まだ、着かないのか』と電話を入れました。すると17時頃に到着とのことでした。仕方なしに眠らないで待っていると、17時過ぎにやっと、ホテルに到着したと連絡があります。18時過ぎにホテルに出向き『何を食べたいのか』とたずねると「魚が食べたい」とのことでした。そこで、島内の高級料亭に連れて行くことにしました。[この項、次号に続きます]

※天体名や人物名などについては、ほぼ原文のままで掲載しています。