若田さん、Z1トラスの取り付けに成功 第1回の船外活動も無事完了

【2000年10月16日】

<リソース> ※日付は日本時間

アメリカ時間11日夜(日本時間12日朝)に打ち上げられたスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-92/3A)の任務が続いている。今回の任務は、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立て作業で、主な作業は「Z1トラス」「PMA-3」のISSへの取り付けである。

アメリカ時間12日午後(日本時間13日朝)には、シャトルの若田光一飛行士と日本の首相官邸の森喜朗総理大臣、大島理森科学技術庁長官および都立三宅高校野球部前主将の津村秀紀さんとの間での交信が行なわれた。シャトルのTVアンテナの故障から映像は途切れ途切れだったが、音声による交信は明瞭だった。この交信において若田飛行士は地上からの質問に答え、任務にのぞむ抱負や、国際宇宙ステーションでの実験の意義、さらには地球人のこれからについて語った。また、三宅島の噴火により避難所生活を続けている三宅島のみなさんを激励した。

この交信の最後に若田飛行士は日本の全ての人々に向けてこう語っている。

「好奇心を大切にして、しっかりと目標を持って、その目標に向かって進んでいけば必ず夢がかなうんだと、そういうことをお伝えしていきたいなと思っています。」

ディスカバリー号は飛行3日目のアメリカ時間10月13日午後(日本時間10月14日早朝)、ロシア上空240マイル(約386キロメートル)を飛行中に、重量70トンのISSにスムーズにドッキングした。

そして、飛行4日目のアメリカ時間10月14日午後(日本時間10月15日早朝)、日本の若田光一宇宙飛行士が操作するロボットアームにより、重量9トンの「Z1トラス」がシャトルの貨物室から取り出され、ISSのユニティ・モジュールに取り付けられた。「Z1トラス」はさまざまな機器を取り付ける土台となる重要な構造物で、現在は姿勢制御装置と通信システムが取り付けられており、次回のスペースシャトル・ミッションでは、巨大な太陽電池パドルが取り付けられることになっている。

この作業の開始後まもなく電気回路のショートが発生し、若田飛行士が使用する一部機器が故障するというトラブルが発生したが、若田飛行士は何事も無かったかのように作業を続け、この重要な作業を成功させた。取り付け完了はアメリカ中部夏時間10月14日午後1時20分(日本時間10月15日午前3時20分)で、計画より2時間遅れだった。

飛行5日目、アメリカ時間10月15日午前9時27分(日本時間10月15日午後11時27分)から、今回の飛行で第1回目のEVA(船外活動)が行なわれた。リロイ・チャオ飛行士とウイリアム(ビル)・マッカーサー飛行士の2名はこのEVAにおいて、Z1トラスとユニティ間の電力配線の接続、Sバンドアンテナの仮置き場への移設、Kuバンドアンテナブームの展開、船外活動用工具箱のZ1トラスへの取り付けを行なった。作業は順調そのもので、作業時間は計画の6時間30分より2分7秒早かった。

このEVAにおいて若田飛行士は、ロボットアームを操作してEVAクルーのための足場を提供し、作業を支援した。

その後、EVA支援作業を終えた若田飛行士から、短歌が披露された。

果てしなき 真闇の宇宙(そら)に 生き生きと 地球の草の 緑輝く

若田飛行士はこの短歌に寄せ、「ほんとうにこの青い地球、そこに見える緑に大変うつくしさを感じます。私たちはこの人間の活動領域を広げていくとともに本当にこの地球の環境を守っていかなければいけないなということをつよく感じました。」と語った。

若田飛行士は飛行6日目のアメリカ時間10月16日にはロボットアームを操作して、ISSとスペースシャトルを連結するドッキングポートである「PMA-3」を取り付けることになっている。この作業は、第2回のEVAのクルーとの協調作業となる。

なお、今回のミッションは、20世紀最後のスペースシャトルのフライトであり、シャトル史上100回目の打ち上げ、99回目の飛行である。

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