世界最大、20億立方光年の宇宙シミュレーション
【2005年6月8日 PPARC News】
イギリス、ドイツ、日本、カナダ、アメリカの天文物理学者からなる国際グループ「Virgo協会」が、宇宙の進化と銀河やクエーサーの形成に関する、今までで最大のシミュレーションを行い、その最初の結果を発表した。
「ミレニアム・シミュレーション」と名付けられたシミュレーションによって再現されたのは、20億立方光年という広大な領域にある100億個以上の粒子の分布の移り変わりだ。膨大な出力結果から、形成された2000万個の銀河と、その中心部にある巨大なブラックホールが進化していく過程を追うことができるという。
マイクロ波で捉えた宇宙の背景放射から、われわれの宇宙がたった40万歳だったころ、宇宙に見られる構造といえば、物質と電磁波が作るさざ波ほどのゆらぎしかなかったことが明らかになっている。やがてそれらが重力作用によって、現在見られるような複雑かつ豊かな構造をもつ宇宙へと進化してきたのだ。天空探査スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)によって、宇宙年齢が今の10分の1しかなかったころに、すでに太陽の10億倍以上の質量を持つブラックホールが存在したことが観測されている。この急速な進化は、従来のモデルでは考えられなかった。しかし、ミレニアム・シミュレーションの結果では、SDSSが発見したような大きさのブラックホールが、宇宙誕生後数億年で形成された。
最新の宇宙論によれば、宇宙の70%は、宇宙膨張を加速させている原因とされる暗黒エネルギーで、25%が観測できない未知の物質であるダークマター、そして私たちが実際に見ることができる物質は5%しかないという。ミレニアム・シミュレーションは、これらすべてを計算に組み込んでいる。従って、ミレニアム・シミュレーションの結果は、見えている宇宙だけでなく、ダークマターや暗黒エネルギーの性質、そしてそれらを含めた宇宙の全体像の理解に大きく貢献するはずだ。