「大赤斑」に加え、木星に新しい「赤斑」が出現
【2006年3月10日 Science@NASA】
木星の白斑「Oval BA」が、ここ数週間で大赤斑と同じ赤い色へと変化した。白斑が赤く変化しても長くは続かないことが多いなかで、今後「Oval BA」が、文字通りの赤い「赤斑」としてとどまるのか、果たしてどのような変化を見せるのか今後に注目だ。
「Oval BA」という名称をもつこの新赤斑は、3つの小さな渦が合体してできたもので、その大きさは大赤斑の半分ほど。ハッブル宇宙望遠鏡やその他の望遠鏡も観測し、注目されてきた。本家の「大赤斑」も、数世紀前に起きた同様の合体によって形成されてものと考えられているが、こちらの年齢は少なくとも300歳を超え、大きさは地球の2倍程もある。
2000年発見当時の「Oval BA」は、合体前の渦同様に白い色を見せていた。その色に変化が現れたのは、ここ数ヶ月間のこと。2005年11月時点では白かったものが、12月には茶色へ、そしてここ数週間で赤に変わり、今では大赤斑とほぼ同じ色になっている。
木星を始めとする巨大惑星の研究家も、この変化を驚きと強い関心をもって観測を続けている。NASAのJPL(ジェット推進研究所)のオールトン氏は、「数年間木星をモニターし続けてきたが「Oval BA」の赤い色を確認し、これで待ちに待った現象がついに起きたのだと確信できた」と話している。
大赤斑が「なぜ赤いのか」という根本的な理由はわかっていない。支持されている説では、木星大気の深い部分から巻き上げられた雲が太陽の紫外線と化学反応を引き起こすためではないかと考えられている。
木星の大赤斑は、木星上で最大であるとともに太陽系で最大の台風とも言えるものだ。その最上部は、周辺の雲の上空8キロに達している。物質をこれほどまでの高く巻き上げるのだから、どれほど強力であるかがわかる。「Oval BA」も大赤斑と同程度の威力をもつようになったために、その色が赤く変化したと考えられる。もしそうだとすれば、赤味が増すほどに、威力も増していることになる。
木星では過去にも、いくつかの白斑がかすかに赤っぽい色へと変化したことが観測されている。最も最近では1999年に観測例がある。しかし、それらの白斑の変化は頻繁には見られず、大抵は長く続かない。その意味でも、「Oval BA」が文字通りの赤い「赤斑」としてこのままとどまれば、これ以上興味深いことはない。
木星は、夜明け前の南の空にひときわ輝いて見えているので、すぐに探せる上、小望遠鏡でも縞模様の帯や衛星も見ることができる。25センチクラス以上の望遠鏡があれば、「Oval BA」の追跡は可能だ。皆さんもぜひ「Oval BA」を観測して、次に「Oval BA」で何が起きるかのか、その変化を見守ってほしい。
巨大な台風がつくる大赤斑:木星の表面でもっとも目立つ部分は、「大赤斑」と呼ばれる、目玉のような模様です。その正体は、巨大な雲の渦巻きで、大赤斑の周りでは、小さな雲の斑点が半時計周りに動いています。大赤斑は1830年に観測が始まってから、一度も消えたことがありません。大赤斑がどうしてできたのか、なぜ消えないのかは、まだよくわかっていません。(「太陽系ビジュアルブック」より一部抜粋)