ハーシェルは天王星のリングを見たか

【2007年4月27日 RAS Press News

天王星のリング(環)を最初に発見したのは、18世紀のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルだとする研究が発表された。


(ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天王星)

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天王星。クリックで拡大(提供:Erich Karkoschka (University of Arizona) and NASA)

現在、天王星に環が初めて発見されたのは1977年とされている。天王星が恒星の前を通過する際に、恒星の光が遮られたことから環が発見された。しかし、Surry Satellite Technology社のStuart Eves博士によれば、最初に環を見たのは天王星の発見者でもある天文学者ウィリアム・ハーシェルだというのだ。もしそうだとすれば、天王星の環の発見年代は、定説より約200年も前だったことになる。

1797年12月にハーシェルは天王星の環らしきものに関する論文を発表した。Eves博士は、これが初めての天王星の環の発見報告だったと考えている。しかし、1797年当時天王星に環はないと考えられていたために、ハーシェルの環に関する主張は単なる誤りとして退けられてしまったのだ。その後約200年間、天王星の環は観測されることはなかった。そして、1977年に環が見つかった。その環は、ハーシェルの望遠鏡では検出不可能と考えてもまったく不思議がないほどかすかなものだった。

Eves博士は、ハーシェルが環を見たという記述は事実だったと考えている。1797年にハーシェルが発表した論文の記述を現在のデータと比較することで、正しい内容が多く含まれていることがわかったからだ。まず、環の大きさがほぼ正しいこと、そして環の向きや天王星の公転によって変化する環の外観を正確に記述していたこと、さらに驚くべきは、環の色までも記されていたことだ。一番明るい「ε(イプシロン)環」の色は、近年になってハワイ・マウナケア山頂にあるケック天文台の観測でやや赤い色をしていることが確認されている。

しかし、1700年代後半にハーシェルが「ε環」を見たと仮定した場合、1つの疑問が残る。ハーシェルによる観測の後、望遠鏡の性能は確実に進歩していった。にもかかわらず、なぜ200年もの間再び観測されることがなかったのだろうか。博士によれば、現在土星を探査しているNASAの土星探査機カッシーニがヒントを与えてくれているという。

カッシーニによる探査では、土星の環が時間とともに拡散し、より暗くなるように変化していることが明らかとなっている。同様のことが天王星でも起きているとすれば、環も200年の間に著しく変化していたとしても不思議はないという。ハーシェルの観測は、太陽系の惑星をとりまく環境が、今まで考えられてきた以上にダイナミックなものであることを証明しているのかもしれない。