実はもっと近かったアンテナ銀河

【2008年5月22日 ESA

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測で、今まで6500万光年と考えられていたアンテナ銀河までの距離が、実は4500万光年であることが明らかとなった。


(アンテナ銀河の画像)

年老いた赤い星が存在する領域(左の四角内)と同領域の拡大図(右)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA & Ivo Saviane (European Southern Observatory)

からす座のアンテナ銀河は、NGC 4038とNGC 4039という2つの銀河が衝突した姿だ。われわれから近い距離にあるため、衝突銀河の典型として、銀河の進化に関する理論を検証するための標準天体として利用されている。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)のIvo Saviane氏が率いた国際的な研究チームは、HSTを使ってアンテナ銀河内の星を観測した。その結果、今まで6500万光年と考えられていたアンテナ銀河までの距離が、実は4500万光年であることが明らかとなった。

研究チームは活動的な銀河中心部を避けて、衝突で飛び散った物質が尾のように伸びている領域を観測した。ここには、比較的活動が穏やかな老齢の赤色巨星(燃料の大半を使いきり、赤くふくれあがった恒星)が存在する。その明るさと色の分布には一定の関係があるので、見かけの明るさと色を調べることで、距離を知ることができるのだ。

アンテナ銀河は6500万光年も離れていると考えらえていたために、これまで、いくつか例外的な特徴が指摘されてきた。たとえば、星形成の割合が高いこと、超巨大な星団が存在すること、ひじょうに強いX線源が観測されることなどである。

一方、今回明らかになったように近ければ、これらの特徴は、それほど極端なものではなくなる。たとえば、衝突で形成された星団が他の衝突銀河に比べて1.5倍も大きいと指摘されていたが、もはやその大きさに不思議はないのだ。

アンテナ銀河を構成するNGC 4038とNGC 4039のように、わたしたちの天の川銀河も、数十億年後にアンドロメダ座大銀河と衝突する可能性がある。銀河どうしの衝突は、現在ではそれほど頻繁ではないが、かつては銀河の進化における重要な過程だったと考えられている。その点で衝突銀河の研究は、重要な研究課題のひとつなのである。