ハッブル宇宙望遠鏡、地球を10万周
【2008年8月12日 HubbleSite】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、今月11日に地球周回軌道10万周を達成した。これにあわせて撮影された大マゼラン雲のクローズアップは、いつもと変わらぬ鮮やかさと迫力だ。10月には宇宙飛行士によるメンテナンスが控えていて、HSTのさらなる性能向上が期待されている。
1990年4月、HSTはスペースシャトルから高度約600kmの地球周回軌道に投入され、97分ごとに地球を1周してきた。それから18年以上経過し、米国東部夏時間で2008年8月11日午前7時42分(日本時間午後8時42分、以下同)に周回数が10万に達した。
HSTの公式ホームページでは、前日の8月10日に撮影された画像が公開された。写っているのは、われわれの天の川銀河の隣にある小銀河、大マゼラン雲の一角。かじき座の方向約17万光年の距離にある散開星団NGC 2074と、それをとりまく星雲だ。新しい恒星がさかんに誕生しては強力な紫外線を発しているので、周囲のちりは削り取られて複雑な構造を形成し、ガスは元素に応じた色で輝いている。これまでHSTが幾度となく届けてくれたような美しい光景だ。
軌道投入後も、たびたびスペースシャトルがHSTを訪れ、老朽化した部品を交換して新しい装置を取り付けることで最先端の能力を維持してきた。1993年の第1回ミッションでは、主鏡のゆがみを補正するとともに、今回の撮影にも使われた「広視野/惑星カメラ2(WFPC2)」が取り付けられた。4度目のミッションとなった2002年には、最新鋭の撮像装置「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」が取り付けられている。
ところが、ACSは2007年1月に回路のショートで故障してしまった。スペースシャトル・コロンビア号の事故などの影響から、HSTの修理ミッション自体、2002年以来実施されていない。
待ち望まれていた5度目のミッションは、10月8日打ち上げ予定のスペースシャトル・アトランティス号の乗務員によって行われる。新たに「広視野/惑星カメラ3(WFPC3)」などが取り付けられるほか、ACSの修復にも挑戦する。そして、これがHSTの最後のメンテナンスとなる。
5度目のミッションで、HSTの運用期間はさらに5年ほど延長できると期待されている。地球を周回しながら宇宙をのぞき込む旅は、もう少しだけ続く。