ペルセウス座GKの2年ぶりの増光

【2008年10月3日 アストロアーツ】

秋の夜空は変光星の宝庫。比較的簡単な観測で天文学的に貢献できる天体なので、取り組んでみてはいかがだろうか。そんな変光星の中でも研究史上重要な天体、激変星ペルセウス座GKが2年ぶりの増光を始めている。


文:滋賀県ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん

(ペルセウス座GKの模式図)

ペルセウス座GK:赤色星から流れ込んだガスが降着円盤を通じて白色矮星に流れ込んでいく。この星では白色矮星が磁場を持っているために、ガスは磁極に降り注いでいる。クリックで拡大(提供:高橋進さん、以下同)

(ペルセウス座GKの最近の光度曲線)

2008年7月から現在までの、ペルセウス座GKの光度曲線(VSNETメーリングリストデータより)。クリックで拡大

(ペルセウス座GKの前回極大時の光度曲線)

前回の極大時(2006〜2007年)におけるペルセウス座GKの光度曲線(VSNETメーリングリストデータより)。クリックで拡大

ペルセウス座の激変星ペルセウス座GKの2年ぶりの増光が始まりました。ペルセウス座GKは激変星の正体や新星と矮新星の関係を明らかにした、天文学的にもとても重要な天体です。この増光はおそらく数か月間かかるかと思われます。この機会に激変星の魅力をぜひお楽しみください。

1901年にスコットランドのAndersonはペルセウス座に見なれない3等の明るい星が輝いているのを発見しました。ペルセウス座新星1901(のちにペルセウス座GKという変光星名がついています)です。新星はその後さらに明るくなり、2日後には0.2等にまでなりました。発見の2日前に米・ハーバード天文台で撮影した写真乾板には、この位置に13等の天体が写っていました。このことから新星は2日間の間に10等、極大等級と比べると13等も明るくなったことがわかりました。

新星はその後増減光をくり返しながら暗くなっていき、最近の平常光度はおよそ13等ですが、数年に一度の頻度で増光を繰り返すという「矮新星(UG型激変星)」の状態を繰り返すようになりました。このことから新星と矮新星とは同じ種類の天体であることがわかりました。

主星が白色矮星、伴星が赤色星または主系列星の近接連星で、伴星から白色矮星へ物質が流れ込むと、たいていの場合には白色矮星のまわりに降着円盤が形成されます。降着円盤を経由して白色矮星に降り積もった物質が臨界量を超えて核融合反応を起こすのが新星爆発です。この爆発は白色矮星に降り積もった物質が臨界量を超えるたびに起こりますが、たいていの場合は数万年かその以上の年月がたたないと臨界量が超えるところまではいきません。ただし中には数十年で爆発を起こすものもあり、それは反復新星とか再帰新星と呼ばれます。

ところで、降着円盤を形成するガスは普段は安定的に白色矮星のまわりを回っていますが、伴星からガスが流入してくるにつれて温度と密度が高くなり、やがて不安定になりガスが急激に内側に落ち込んでいきます。このときに降着円盤が激しく光りだすのが矮新星の増光メカニズムだと言われています。ペルセウス座GKはまさにこの両方の現象を見せてくれた貴重な天体なのです。

今回の増光は9月初めに始まりました。多くの場合、ペルセウス座GKは増光開始から1か月あまりでおよそ10等程度の極大になり、その後またゆっくりと減光していき、1か月あまりでもとの13等に戻ります。一般の矮新星と比べると大変にゆっくりとした光度変化ですが、それだけに観測もゆっくりと楽しめます。

しかし、2006年12月から翌年の春にかけて見られた前回の増光は、11等台半ばまで明るくなった後数回の増減光を繰り返すという大変に変わった光度変化を見せました。はたして今回の増光ではどのような光度変化を見せるのか、たいへんに興味深いところです。この機会にぜひ多くの皆さんの観測をお願いします。なお観測用の変光星図は日本変光星研究会のホームページより取り寄せることができます。「変光星図」−「Per」(ペルセウス座)とリンクをたどれば、平沢康男先生による「GK Per」の変光星図がありますので、どうぞご利用ください。