巨大銀河の衝突で、星の形成が止まる?
【2008年10月14日 NOAO News】
おとめ座銀河団の観測で、2つの銀河の間に、約40万光年もの長さに伸びるガスがとらえられた。これは巨大な銀河どうしが高速で衝突した証拠であり、多くの銀河で星の形成が止まる理由が、この現象によって説明できるという。
米・エール大学のJeffrey Kenney氏らの研究チームは、われわれから約5千万光年の距離にあるおとめ座銀河団に所属する渦巻銀河NGC4438および楕円銀河M86をキットピーク天文台のメイヨール4m望遠鏡で観測した。その結果、両者をつなぐように伸びる、長さ約40万光年の水素ガスの存在を明らかにした。
水素ガスのスペクトルを数か所で測定し、われわれの視線方向に対する移動速度を調べたところ、このガスが確かにNGC4438とM86を直接つなぐ「橋」のようなものであることがわかった。2つの銀河が過去に衝突して、現在遠ざかりつつある証拠だ。
ところで、M86の内部を満たす星間ガスは、ほかの多くの楕円銀河同様、X線を放射するほどの高温である。ガスは冷えなければ収縮することができず、新たな星が誕生することもできない。このように楕円銀河の星間ガスを加熱して星の形成を止めてしまう原因は、今のところ天文学で最大級の謎である。
有力な説として、銀河中心の巨大ブラックホールの活動で生じるエネルギーがガスを加熱している、というものがある。しかし、今回の研究によれば、原因は銀河の外にもあるかもしれない。
中規模の銀河どうしがゆっくりと衝突すると、ガスが中心付近に集中するので星の形成率は向上する。ところが、M86のように巨大な銀河の場合は、重力が強い分相手の銀河が引き寄せられる速度も大きくなり、衝突エネルギーで加熱されたガスはもはや星を形成するほどまでに冷めることができなくなる。
NGC4438とM86の衝突はとりわけ激しく目立つものだったが、小銀河やガスの吸収などのように小規模で観測しにくい現象も、星間ガスの加熱に寄与しているのではないかと研究チームは考えている。