「すざく」、銀河団の全貌に迫る

【2009年6月9日 NASA

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のX線天文衛星「すざく」が、銀河団PKS 0745-191を観測し、中心から500万光年までの領域にある高温のガスが放つX線を検出した。銀河団の中心からこれほど離れた領域がX線で観測されたのは初めてのことで、銀河団の姿や進化を知るための重要な手がかりになりそうだ。


(ハッブル宇宙望遠鏡(HST)による銀河団PKS 0745-191の画像)

銀河団PKS 0745-191の中心にある巨大銀河。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影。クリックで拡大(提供:NASA/STScI/Fabian, et al.)

(PKS 0745-191にひろがる高温ガスのX線放射の画像)

すざくがとらえた、PKS 0745-191にひろがる高温ガスのX線放射。1枚目の画像に相当する領域が中心に表示されている。クリックで拡大(提供:NASA/ISAS/Suzaku/M. George, et al.)

X線天文衛星「すざく」が、とも座の方向約13億光年の距離にある銀河団PKS 0745-191の外縁部を観測し、銀河団を包む数百万度の高温ガスが放射するX線を検出した。

研究チームの一人である米・カリフォルニア大学バークレー校のMatt George氏は、「すざくによって、われわれは宇宙最大級の構造がいかにして成長するかを観測できるのです」と話す。

X線で銀河団を見ると、ガスの密度や温度がわかり、ガスの圧力や銀河団の質量を知る手がかりが得られる。銀河団の中心付近では、ガスの物理的状態と重力は平衡を保っているが、中心から一定以上離れたところではまだガスが銀河団に「降り積もって」いる不安定な状態だ。PKS 0745-191の観測では、このいわば「銀河団の成長領域」におけるガスの性質を測定することに成功した。

すざくによる観測で、PKS 0745-191のガスが一番熱いのは中心から110万光年で、約9100万度であることがわかった。中心から離れるにしたがって温度は徐々に下がり、中心から560万光年以上離れた場所では、2500万度だった。

今後、すざくによる銀河団外縁部の観測がさらに進むことで、この巨大な構造がどのように進化するのか、明らかにされると期待されている。