スピッツァー、二度目のファーストライト
【2009年8月11日 Spitzer Newsroom】
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーは、2009年5月15日に冷却用の液体ヘリウムを使いきり、超低温モードでの運用を終了した。7月27日の高温運用正式スタートを前に撮影された画像がこのほど公開され、第二のキャリアにおける活躍を期待させてくれている。
赤外線による天体観測では、熱を帯びた装置自身の発する赤外線が邪魔となる。スピッツァーは装置全体を摂氏マイナス270度に保つことでこれを防いできたが、そのために必要な液体ヘリウムを5年半の運用で使い切ってしまった。
とはいえ、それでも温度はおよそ摂氏マイナス244度。比較的短い波長の赤外線なら、今後も赤外線カメラIRACによる観測が可能だ。
今回送られてきた3つの最新画像には、幼い星がひしめく星形成領域DR 22(はくちょう座)、約6800万光年かなたの典型的な渦巻銀河NGC 4145(りょうけん座)、4本のジェット状噴出で物質が外側へ広がっているようすが特徴的な惑星状星雲NGC 4361(からす座)が、それぞれ見事にとらえられている。
「IRACのチャンネルのうち波長が短い2つ(3.6μmと4.5μm)のパフォーマンスは、液体ヘリウムがなくなる前と基本的には変わりません」とNASA本部でスピッツァーに携わるDoug Hudgins氏は語る。「このくらいの波長に関してなら、スピッツァーの感度はいまだ地上の30m望遠鏡に匹敵するといえます。今回の画像をみれば、これからの高温運用でも、美しくかつ興味深い一線級のデータを送り続けてくれることがわかるでしょう」
2003年8月25日の打ち上げ以来、数々の画期的な発見をもたらしてきたスピッツァー。今後も、ハッブル定数(宇宙の膨張速度を表す数値)を精密に求めるためのデータを集め、宇宙の果ての銀河を探し、地球近傍天体を調査し、運用が始まったばかりのNASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」がやがて見つけるであろう惑星を分析するなど、精力的に宇宙の謎に挑むことが期待されている。