過酷な宇宙のゆりかご
【2009年9月2日 ESO】
われわれの太陽系が誕生間もないころ、周囲はどんな環境だったのだろうか。星形成領域の1つである星団RCW 38の観測から、太陽系の起源や惑星の誕生について詳しく知ることができるという。
ほ座の方向、約5500光年の距離にある星団RCW 38は、生まれたばかりの星がガスやちりの雲に埋もれてひしめく領域だ。RCW 38で生まれた小さな星や惑星は、周囲の大質量星からの強力な恒星風や、大質量星が起こす超新星爆発の一撃を受けるなど過酷な環境にされされる。このような場所で、新たな惑星系の形成が進む。われわれの太陽系も、似たような環境で誕生したと考えられている。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのKim DeRose氏は「RCW 38のような星団を観測することで、そこに生まれる恒星や惑星だけでなく、私たちの太陽系の起源についても詳細に知ることができるのです」話している。
DeRose氏らは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)と補償光学装置NACOを使って、RCW 38のほぼ中心に位置する青白い星IRS2の周辺を鮮明にとらえた。
IRS2の周辺には、生まれたての星が数個発見された。これらの星は、核融合反応がまだ本格的に始まっておらず、かすかな光しか放っていない。IRS2の強い紫外線によって、恒星になりかけた物質も集まる前に吹き飛ばされてしまう。これらの星のいくつかは生き残ることができないかもしれない。
おまけに、密集した星形成領域では、頻繁に大質量星が超新星爆発を起こす。その爆発によっても、生まれかけの星は散らされてしまう。一方、放出された物質は、次世代の星の材料にもなる。超新星爆発では、めずらしい同位体が形成されるが、われわれの太陽でも同じ同位体が検出されている。太陽もやはりRCW38のような密集した過酷な環境の中で形成されたのだろう。