マックノート彗星(C/2006 P1)、過去最大の彗星候補に

【2010年4月19日 RASJPL

2006年8月に発見されたマックノート彗星(C/2006 P1)は、2007年1月から2月にかけて明るい肉眼彗星となり、迫力のある尾をたなびかせて多くの天文ファンの注目を集めた。太陽極軌道探査機「ユリシーズ」の観測データから、マックノート彗星が百武彗星やハレー彗星をしのぐ大彗星であったことが明らかになった。


マックノート彗星(C/2006 P1)の画像)

マックノート彗星(C/2006 P1)(提供:Sebastian Deiries/ESO)

太陽極軌道探査機「ユリシーズ」は、ESANASAの共同ミッションとして1990年に打ち上げられた。太陽風の活動や、宇宙線と太陽風の相互作用などを調べるための観測を行い、2009年6月にミッションを終了した。

ユリシーズは、約18年のミッション期間中に、偶然彗星の尾の中を通過する機会が3回あった。そのなかには、これまででもっとも長い尾の記録を持つ、1996年に発見された百武彗星(C/1996 B2)が含まれており、2007年には、マックノート彗星(C/2006 P1)の尾の中を通過して観測を行った。

研究者は彗星の大きさを知るために、尾の長さを計測するのではなく、彗星の影響を受けている領域の大きさを探査機を使って調べるのである。

ユリシーズの観測データから、マックノート彗星の周りに衝撃波が起きていたことが示された。衝撃波は、彗星の核から放出された電気を帯びたガスが、太陽風の高速の粒子と作用して発生したものである。当時のマックノート彗星の位置では、通常の太陽風の速度は秒速700kmほどであるのに対し、彗星の尾の内部では秒速400kmにまで落ちていた。

データの分析結果について、英・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン ムラード宇宙科学研究所のGeraint Jones博士は、次のように話している「マックノート彗星のイオンの尾は、ちりの尾に比べて観測が難しく、どれくらい長く伸びていたのか計算することはできません。わたしたちが言えることは、百武彗星の尾の場合、衝撃波を受けた太陽風の領域を通過するのに、ユリシーズは2日半かかりました。驚いたことにマックノート彗星の尾の場合は、18日もかかりました。地上から見た彗星の姿は圧巻でしたが、太陽風にとっても、この彗星は大きな障害物だったのです」。

他の観測例をあげると、1992年にESAの彗星探査機ジオットがグリグ・シェレルプ彗星(26P/Grigg-Skjellerup)を観測している。その際、衝撃を受けた領域の通過には30分もかからなかった。また、ハレー彗星(1P/Halley)の場合には数時間かかった。18日間という日数から、マックノート彗星のスケールの大きさがうかがえる。