カッシーニ、土星の稲妻を撮影、動画を公開

【2010年4月20日 JPL

NASAの土星探査機カッシーニが土星の稲妻を直接撮影し、静止画をつなぎあわた動画が公開された。地球以外の惑星で起こった稲妻が撮影され、動画が作成されたのは初めてのことである。


(土星で観測された雲と稲妻の画像)

土星で観測された雲と稲妻。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute/University of Iowa)

土星では2009年1月から10月まで嵐が続いていた。10か月間という発生期間は、これまでに太陽系内で観測された嵐の中では最長である。土星探査機カッシーニは、この嵐で発生した稲妻を2009年8月に撮影した。その後、動画を作成するために、2009年11月から12月中ごろまで発生していた別の嵐を観測した。

10秒の動画作成に使用された画像は、2009年11月30日に16分以上かけて撮影されたもので、閃光の持続時間は1秒以下であった。画像には、長さ3,000kmに伸びる雲と、稲妻によって直径300kmほどの領域が明るくなるようすがとらえられている。

また、カッシーニに搭載されている電波・プラズマ波動観測装置「RPWS」は、静電気が放電された際の電波をとらえた。しかし、その電波は、人間の耳では聞くことのできない周波数である。地球で稲妻が発生した際にAMラジオでノイズが発生するが、作成された動画では、実際にとらえられた電波に合わせて、そのようなラジオのノイズに近いものが再現され、収録されている。

そのほか、動画と電波による観測データから、嵐で発生した稲妻の光は、地球上で発生するもっとも強力な稲妻と同じくらいの明るさを放っていたことが示された。今後、放たれた閃光の大きさから、雲の下のどのあたりにまで稲妻が伸びていたかが調べられる。

土星ではこれまでに、1977年に打ち上げられたNASAの探査機ボイジャー、その後にはカッシーニが、嵐による電波放射をとらえていた。しかし、カッシーニが稲妻の閃光を直接撮影したことはなかった。カッシーニが土星に到着した2004年当時、土星の巨大な環が太陽光を反射していたため、夜側でさえ地球上の満月の夜以上の明るさになっていて、稲妻の観測が難しかったためである。

その後、2009年8月に「春分」を向かえた土星には、赤道に対して太陽光がまっすぐに射し込むようになり、環の真横の部分をのぞいて、大部分が影の中に入ったため、稲妻の観測が可能になった。

米・カリフォルニア工科大学で活動するカッシーニ撮像チームの一員Ulyana Dyudina氏は「可視光画像は、稲妻についてたくさんのことを教えてくれます。光の強さと嵐の持つ総エネルギーとの関係などをもとに、嵐がどれほど強力なものだったのか、これから計測を始めます」と今後の研究について語っている。

なお、公開された土星の稲妻の動画は、以下のリリース元で見ることができる。