「WISE」、全天の75パーセントのサーベイを完了
【2010年6月7日 NASA Mission News】
NASAの赤外線天文衛星WISEは、今年1月のファーストライト以降、赤外線による全天サーベイを進めている。これまでに全天の4分の3の領域をサーベイし、6万個以上の小惑星をとらえた。そのうちの1万個以上がWISEによって初めて観測されたものである。
WISEは5月24日までに、小惑星を6万個以上、彗星を70個以上、地球近傍天体を約200個を観測した。観測された各種天体の4分の1ほどがWISEによって初めて観測されたものである。
観測された小惑星のほとんどは、火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)に存在している。WISEは1日に約100個ほどのメインベルト小惑星を発見しており、これらは地上に設置された望遠鏡ネットワークなどによって追加観測が行われることになっている。
WISEは赤外線で観測を行うが、これは小惑星観測にさまざまな点で適している。たとえば小惑星の大きさを測る場合、可視光では「表面がぴかぴかした小さな岩」と「表面が真っ黒い大きな岩」は遠くからは同じ大きさに見えるかもしれないが、赤外線は天体そのものからの熱放射をとらえるので物体の大きさ自体を写し出すことができる。また、小惑星の中には可視光をほとんど反射しないものもあるが、WISEはそのような小惑星からの赤外線をとらえることもできる。WISEの観測からは、さまざまな大きさや性質を持った小惑星のサンプルが得られるのである。
WISEは、木星と同じ軌道上を回っているトロヤ群小惑星も調べている。トロヤ群とは、太陽から見て木星の前後に約60度ずつ離れた場所にある小惑星の集まりで、これまでに約800個が観測された。ミッション終了時までには4500個ほどのトロヤ群小惑星が観測される予定で、太陽系の外惑星の進化に関する理論研究に利用される。
また、観測された数は少ないものの、地球近傍天体(小惑星や彗星)も発見している。最終的には数百個もの地球近傍天体の大まかな大きさや組成に関するデータがもたらされる予定だ。その中には、これまでに知られていなかった天体のデータも100〜200個ほど含まれるだろう。
さらにWISEは、10個ほどの新彗星も発見した。この観測も、彗星の大きさや組成、密度などの研究に役立てられる。また、彗星の軌道の計測は、もともと太陽系外縁の軌道にあった彗星が、どのようにして太陽の方向に向かってはじき出されることになったのかを説明するための情報として利用される。
WISEは、今年の10月に1回半の全天サーベイを完了する予定だ。