ハッブル宇宙望遠鏡、再び木星の発光現象の正体を明らかに
【2010年6月18日 HubbleSite】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測で、2009年7月に木星に衝突した天体が幅500mほどの小惑星であったことが明らかになったばかりだが、HSTは今月初めに木星の表面で起こった発光現象についても、衝突した天体の正体を明らかにした。
米国東部夏時間6月3日午後4時31分に、オーストラリアのアマチュア天文家Anthony Wesley氏は、望遠鏡で木星のライブ映像を見ていた際、木星の表面で起こった発光現象を目撃した。フィリピンでは、アマチュア天文家のChris Go氏が同じ一瞬の現象を確認、2秒ほど続いた発光をビデオにおさめた。
その発光現象は、4億kmの彼方にある巨大な惑星に何かが衝突して起こったことはわかったが、大気のどの程度の深さにまで天体が入り込んだのかなど、詳しいことはわからなかった。
そこで、発光現象から3日後にHSTが木星を撮影した。広視野/惑星カメラ3(WFPC3)がとらえた鮮明な画像には、木星の表面に浮かぶ雲に天体の残骸のようなものは見られなかった。つまり、天体が雲の下に入り込まなかったこと、さらに天体が爆発しなかったことを示しており、発光現象は巨大な天体が最上層の雲の上で燃え尽きたために起こったことが明らかになった。
米・宇宙科学研究所(SSI)のHeidi Hammel氏は、「(2009年や1994年に起こった天体の衝突であれば)爆発の破片が暗いすす状に噴出し、それが雲の上に降り注ぐはずです。そのようすをとらえた紫外線や可視光画像では、衝突現場の周囲が暗く見えるはずなのです。今回は、それを示す特徴は何も見られません。つまり、爆発はなかったということです」と話している。
今回木星に衝突した天体は、隕石だったとみられている。木星に落ち込んでいった隕石は、大気中で加速して温度が上昇した。高温となった隕石が大気中を通過することで、その背後に超高温となった大気ガスと蒸発した隕石の一部からなる尾ができ、それが輝きを放った。しかし、急速に尾の物質は冷え、数秒でその輝きを失ったと考えられている。