太陽系内でもっとも高い反射率を持つ、外縁天体「2002 TX300」

【2010年6月23日 Williams College

恒星食を利用した太陽系外縁天体「2002 TX300(KBO 55636)」の観測から、同天体が直径約300kmとこれまで考えられていたよりはるかに小さいこと、さらに、これまでに知られている太陽系天体のなかで、もっとも高い反射率を持つことが明らかになった。


(太陽系外縁天体の想像図)

太陽系外縁天体の想像図(提供:NASA, ESA, and G. Bacon (STScI))

太陽系外縁天体とは、海王星の外側に存在する小さな天体である。そのような遠方にある小天体の表面などを直接観測することはひじょうに難しい。米・マサチューセッツ工科大学(MIT)と米ウィリアムズ・カレッジのJay Pasachoff氏らの研究チームは、太陽系外縁天体の1つである「2002 TX300 (55636)」の軌道を求め、この外縁天体による星食(地球から見てこの天体が恒星の前面を横切ることで星の明るさが変化する現象)が2009年10月9日に起きることを明らかにし、その観測から太陽系外縁天体の特徴を探ることを試みた。

Pasachoff氏らの研究グループは複数の地点で観測を実施したが、そのうちハワイのオアフ島の高地に設置されているラス・クンブレス天文台の口径2mの望遠鏡による観測で、もっともよい成果が得られた。

データを分析した結果、2002 TX300の半径は約143km(誤差:±5km)と求まり、これまでに考えられていたよりもはるかに小さいことがわかった。また、詳細な計算から、表面から太陽光の88パーセントが反射されていることがわかり、この天体が水と氷の豊富な「ハウメア衝突天体族」の仲間であることが確認された。

ハウメア衝突天体族とは、原始太陽系で起きた巨大な2天体の衝突でできたと考えられている天体だ。その際にできた破片のうち一番大きな天体が準惑星「ハウメア」である。

88パーセントという2002 TX300の反射率は、これまでに知られている太陽系内の天体としては最高の値である。誕生から数十億年も経過していながら、水の氷に覆われた表面がこれほど新鮮に保たれている理由は、よくわかっていない。