老いた楕円銀河の周りに広がる、紫外線を放射するなぞの環

【2010年8月17日 JPL

年老いた楕円銀河の周りに、紫外線を放射する環のような構造が初めてとらえられた。もっとも大きいものは、天の川銀河を取り囲んでしまうほどの大きさである。環は星の材料となる新鮮なガスによってエネルギーを得ていて、銀河は若返っているように見える。今後の研究で予想外の銀河の進化プロセスが明らかになるかもしれない。


(銀河を取り巻く、紫外線を放射する環のような構造の画像)

銀河を取り巻く、紫外線を放射する環や弧のような構造。クリックで拡大(提供:NASA/ESA /JPL-Caltech/STScI/UCLA)

NASAの紫外線天文衛星GALEXが広大な空域を紫外線の波長で観測し、強力に紫外線を放射している楕円銀河とレンズ状銀河30個が選び出された。

天の川銀河のような渦巻銀河に比べると、楕円銀河は年老いた星が多く、新たな星の誕生が少ない。また、レンズ状銀河では進化の早期に星形成が終了していて、新しい星を形成する材料がなくなっていると考えられている。こういったわけで、選ばれた銀河で星形成が起きている兆候は何も見られなかった。

そのGALEXの観測で選ばれた銀河を、高解像度を誇るハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した。その結果、30個のうちの4分の3にあたる銀河のまわりに、紫外線を放射する環のような構造が存在していた。構造の一部は波紋のように広がり、25万光年もの長さに伸びているものもあった。そのほか、いくつかの銀河では、同じく紫外線を放射する渦巻き状の構造も見られた。

米・カリフォルニア大学のMichael Rich氏は、「わたしたちは、これまで(楕円銀河やレンズ状銀河などの銀河に)このような環を見たことはありません。ひじょうに変わった美しいこの構造は、銀河の進化に関するとても重要な事柄を私たちに示しているのかもしれません」と話している。

GALEXHSTの観測から、これらほとんどの銀河の年齢が100億歳ほどであることもわかった。銀河の年齢は全体の色から推測することができる。星形成が進む若い銀河は、生まれたばかりの大質量星が放つ強い光のために青っぽい色に見え、一方で年老いた銀河は、年齢を経て老いた星が放つ光のために赤っぽく見える。

紫外線を放射するこのような構造の存在は、死んだように星形成が止まった銀河で、再び星形成が起こる可能性を示している。年老いた銀河に新鮮なガスが取り込まれて、爆発的な星形成が始まったことを示唆しているのかもしれない。米・インディアナ大学ブルーミントン校 天文物理学科のSamir Salim氏は、「銀河の進化は、星形成の活発な時期から、やがて星が形成されない時期へと移行していくはずです。しかし、別の進化の方向があって、年老いた銀河が若返るようなことも可能なのかもしれません」と話している。ただし、水素のガス雲の存在など星形成を示す証拠はまだ何も検出されていない。

ガスがどこからやってきたのか、環の構造がどのようにつくられたのかは、なぞである。小さな銀河との合体によってもたらされたのかもしれない。とすれば、環をつくるような銀河同士の合体シナリオには問題があるようだ。環をつくるような衝撃波が起きるには、小さな銀河がより大きな銀河のほぼ中心を直撃しなければならず、ひんぱんにおきるとは考えにくい。

一方、銀河の中心に棒状構造が存在している場合、銀河間ガスによって環のような構造が形成される可能性があるようだ。Salim氏らは、銀河における棒状構造の存在や、過去に起きていたかもしれない星形成の証拠となるようなかすかな構造を探すために、今後も観測・研究を進める計画である。