すばる望遠鏡が発見、複数の若い星から噴出するジェット
【2010年8月27日 Subaru Telescope】
すばる望遠鏡が、形成初期段階にある複数の星から噴出しているジェットを発見した。同様のジェットはこれまで、もっと進化の手前の段階にある、ガスやちりの奥深くに隠れている恒星に見られていた。一方、今回ジェットが発見された星はすでにガスやちりの中から姿を現しており、そのジェットの起源はこれまでとは異なるようだ。
オリオン座大星雲の南に位置する星形成領域である巨大分子雲「Lynds 1641」を、すばる望遠鏡の主焦点広視野カメラ(Suprime-Cam)がこれまででもっとも奥深くまで見通し、高解像度の画像を取得した。
すばる望遠鏡がとらえた空域には、多くのハービッグ・ハロー天体から噴き出すガス流がとらえられている。ハービッグ・ハロー天体とは、形成途上の恒星から噴出した超音速のガス流(ジェット)が、周辺の星間物質と相互作用して生じた強力な衝撃波で光っている発光星雲である。
すばる望遠鏡は、Lynds 1641に存在するひじょうに若い星から噴き出す、11のガス流を発見した。同領域に知られているほとんどのジェットよりかすかなもので、すばる望遠鏡「Suprime-Cam」の広視野と、口径8mという主鏡の強力な集光力が発揮された成果といえる。
通常、このようなジェットは、生まれたばかりの星が自らが生まれたガスやちりの奥深くに隠れているとき、つまり、星形成のひじょうに早い段階に見られる。しかし、発見されたジェットはすべて、繭のように星を包んでいたガスやちりの中からすでに姿を現した星から発生していた。
新たに発見されたジェットの起源は2つ考えられている。1つ目は、ジェットがガス流の最後の名残と言えるようなものである可能性。2つ目は、それらの星は連星系を成しており、伴星の接近通過によって、星形成の残骸であるガスやちりの円盤が乱されて引き起こされた可能性である。
すばる望遠鏡による、この予想外の発見を受けて、ジェットとその起源の解明など、今後詳細な研究が予定されている。