初期宇宙のモンスター銀河を多数発見、星形成史発掘に前進
【2010年9月30日 東京大学 大学院理学系研究科・理学部】
日本の研究者を中心とするチームが、80億年以上前の宇宙で爆発的に星を形成する「モンスター銀河」を200個近く発見した。ミリ波・サブミリ波で見つかる同種の天体の大量発見は初めてのことであり、埋もれた星形成史を大きく突き崩す一歩となる。
国立天文台の廿日出文洋研究員、東京大学の河野孝太郎教授らを中心とする国際研究チームが、南米チリのアステ望遠鏡(ASTE)を用いて80億光年以上かなたにある「モンスター銀河」を196個発見した(1枚目の画像)。モンスター銀河とは、誕生から数十億年までの宇宙において天の川銀河の1000倍ほどのすさまじい勢いで星を形成している銀河のことで、これほど大量に発見されたのは世界で初めてのことだ。
近年までは可視光や近赤外線による観測が天文学のメインだったが、この「モンスター銀河」は電波の一種であるミリ波・サブミリ波によって観測される。ラジオの波長域を切り替えると違う番組が聴こえてくるように、観測する波長域を切り替えると違う物質や天体が見えてくるのだ。これまでミリ波・サブミリ波で観測された空の領域はまだほんのわずかであり、いままでは見つからなかった天体を今後掘り起こすことによって星形成の歴史が詳しく正確に解明されることが期待されている。
今回、アステ望遠鏡による精度の高い観測によって、モンスター銀河の明るさごとの個数分布がいままでになく正確に求められた。既存の銀河形成理論の予測と異なる観測結果であるため、理論の見直しを迫るものとなっている(2枚目)。
また、宇宙の歴史全体の中で、従来観測されているのと同程度の量の星形成活動が可視光・近赤外線では見透かせない宇宙のちりに埋もれていて未だ観測されないままなのではないかということも、今回の観測により推定されている(3枚目)。
研究チームでは、今後さらに高い感度の観測を行い、銀河の正確な距離の測定や未発見の暗い銀河の観測を目指している。それによって、星や銀河の形成史、またモンスター銀河の誕生と深い関わりがあると考えられているダークマターの分布が明らかになっていくことだろう。