太陽系の果ての謎の模様、6か月で変化
【2010年10月7日 NASA/SwRI】
NASAの星間境界観測機「IBEX」は約1年前、太陽系を包むヘリオスフィアの果てに起源不明のリボン状構造を発見した。構造は太陽風と太陽系の外からやってくる恒星物質がぶつかってできる高速中性原子(ENA)を強く発するもので、その後たった6か月という短期間に変化が起こっていることが明らかになった。
太陽風は160億kmほど先にある太陽系外縁部で低速度となっており、そこで星間物質とぶつかり混ざり合う。この領域はヘリオシース(Heliosheath)と呼ばれており、その先にあるヘリオポーズでは、太陽風は完全に星間物質に溶け込んでいると考えらえている。
これまでヘリオシースが撮影されたことはない。NASAの星間境界観測機「IBEX」に搭載されている「TWINS」と呼ばれる広視野中性原子分光撮像器は、人間の目で見ることのできないこの領域を地球のまわりを周回する軌道上から観測し、太陽風と太陽系の外からやってくる恒星間物質がぶつかってできる高速中性原子(ENA)を検出・計測することができる。
ENAは、ヘリオシースからあらゆる方向へ高速で移動しているが、その一部は地球の近くを通過する。IBEXはゆっくりと回転しながら、6か月で全天観測を行ってENAのやってくる方向とエネルギーを記録し、その分布を明らかにする。
IBEXによる1回目の観測で、ENAを強く発するリボンのような細長い構造が見つかっていた。2回目の全天観測の結果、ENAの分布に顕著な変化が起こっていることが明らかになった。ENAの強度が10〜15パーセントほど弱くなっていたのである。とくにENAを強く発していた塊のような領域は、エネルギーが拡散してしまったために大きさが3分の1ほど縮小していた。それはまるで、もつれていたリボンがほどけて、低緯度と高緯度の両方向に拡がったような状態だという。
IBEXの主任研究員で、米・サウスウエストリサーチ研究所(Southwest Research Institute)のDavid McComas氏は、「これまで、ENAの変化は6か月などという短期間ではなく、11年と考えられている太陽の活動周期に対応してゆっくりと進んでいると考えられてきました。しかし私たちの観測によって、太陽風と恒星間物質との間で起こっている相互作用は想像以上にダイナミックに変化していることがわかりました」と話している。