赤外線で見る、北アメリカ星雲の幼い星々

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年2月14日 NASA

NASAのスピッツァー赤外線天文衛星による「北アメリカ星雲」の新画像が公開された。可視光とは異なる波長でとらえたこれらの画像は、星の前半生のさまざまな段階をとらえており、若い恒星の候補約2,000個の新たな発見にもつながっている。


(北アメリカ星雲とペリカン星雲の可視光画像)

可視光でとらえた北アメリカ星雲(左)とペリカン星雲(右)(提供:DSS/D. De Martin)

北アメリカ星雲(NGC 7000)は、はくちょう座の方向約1,800光年先にある散光星雲で、北アメリカ大陸に形が似ていることからその名がつけられた。

空の条件のよいところでは肉眼でも、はくちょう座の1等星デネブの少し北西にかすかなシミのように見える。淡いので双眼鏡や望遠鏡では見づらくなるが、写真には赤い色で美しく写り、天体写真で人気の被写体だ。

また右側には、ペリカンを横から見た姿にたとえられる「ペリカン星雲」も見えている。

この同じ領域を、NASAの天文衛星スピッツァーが赤外線でとらえた画像を見てみよう。


(北アメリカ星雲とペリカン星雲の可視光像と赤外線像)

北アメリカ星雲とペリカン星雲の可視光像(青)と赤外線像(赤・緑)を合成した画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/L. Rebull (SSC/Caltech)/D. De Martin)

この画像は、可視光データとスピッツァーによる赤外線データを合成したものだ。可視光データを表す青色の部分は、1枚目とあまり変わらない。

一方、1枚目では暗くて何も写っていないように見えた北アメリカ大陸とペリカンの間の領域には、様々な天体が赤っぽく見えている。これは、可視光では見えない若い恒星やちりの雲が放射する赤外線をとらえたものだ。誕生後約100万年の若い星の集団が、画像中に無数に見えている。

また、ペリカンの後頭部にあたるオレンジ色の部分は、生まれてから約300〜500万年経過した星々が密集しているところだ。


(赤外線でとらえた北アメリカ星雲の画像)

赤外線のみで撮影した北アメリカ星雲周辺。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/L. Rebull (SSC/Caltech))

赤外線データのみを示したこの画像では、可視光で見るような北アメリカ大陸は影も形もない。可視光で黒く見えるちりの雲を見透かす赤外線の観測で見えてくるのは、生まれたばかりの星をまゆのように包むちりが放射する赤外線の輝きだ。

左下の「メキシコ湾」周辺には、まだ暗く渦巻いている部分が残っている。ここに何が隠されているのか、次の4枚目で見てみよう。


(波長の長い赤外線データを追加した画像)

24μmの長波長の赤外線データ(赤)を追加した画像。クリックで「メキシコ湾」周辺を拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/L. Rebull (SSC/Caltech))

この画像では、「メキシコ湾」付近から右下にかけて見える赤い帯が見える。これは北アメリカ星雲のエネルギー源と見られる大質量星の集団からの光が、雲間から射す光のように星雲の陰から伸びたものだ。

クリックすると「メキシコ湾」周辺を拡大した画像が表示され、黒い川のような領域から生まれた何百もの若い星が赤く見える。さらに拡大した挿入図では、若い星からのジェット放出が緑色の筋となって見えている。