2方向に時間差でジェット噴射する原始星

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【2011年4月6日 NASA

生まれたばかりの原始星から2方向に広がるジェットが、4年半の時間差で物質を噴射している様子が観測された。


(「HH34」の可視光画像と赤外線画像)

「HH34」の可視光画像(左)と赤外線画像(右)。可視光画像では赤色、赤外線画像では緑色に見えるのが原始星が噴射するジェット。ジェットの先にはアーチ状の衝撃波(バウショック)も見られる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

この画像は、オリオン座の方向1,400光年先にある「ハービッグ・ハロー(HH)34」(注1)という天体を可視光と赤外線でとらえたものだ。可視光では原始星が双方向に放つジェットのうち1つしか見えていないが、赤外線画像ではダスト(塵)やガスに隠されていたもう1方向のジェットも見えてくる。この赤外線画像はNASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」がとらえたもので、研究しつくされてきた右側のジェットに比べてミステリーのままだった左側のジェットの詳細を初めて鮮明に写しだしている。

ジェットが点のように連なっているのは噴射された物質のかたまりの断続的なパターンで、左右のジェットを比較したところ、同じパターンが4年半の差で現れていることがわかった。つまり、4年半の時間差をもってジェットが噴射されているようなのだ。これは、一方のジェット噴射が音波のような形態でもう一方のジェット噴射に作用する際の時間差が現れたものと見られる。

このパターンとすでにわかっているジェットの噴射速度から、ジェットの出所の位置を今までの10分の1になる半径3AU(注2)の範囲までしぼりこむことができた。

この発表を行ったAlberto Noriega-Crespo氏らのチームでは、他のジェット流の画像を解析し、同様のものがないかさらに研究を進めていくという。

注1:「ハービッグ・ハロー」 生まれたばかりの星は、周囲に集まっているガスとダスト(塵)の円盤から物質を吸い寄せながら成長し、それと同時に、円盤の回転軸と同じ2方向に物質を噴出する。そのジェットが星間ガスとぶつかった衝撃で形成される小さな星雲状の天体を「ハービッグ・ハロー天体」と呼ぶ。

注2:「AU(天文単位)」 「Astronomical Unit」の略で、1天文単位=太陽〜地球の平均距離、約1億5000万km。