探査機ドーン、小惑星ベスタへの最終接近フェイズへ

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【2011年5月9日 NASA

2007年に打ち上げられ、小惑星ベスタと準惑星ケレスを訪れる計画となっている探査機「ドーン」が、7月に迫ったベスタへの軌道投入へ向けていよいよ最終接近フェイズへと入った。7月から1年間ベスタの探査を行った後、2015年にケレスの探査を行う予定だ。


(探査機「ドーン」のイメージ図)

探査機「ドーン」のイメージ図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

探査機「ドーン」は小惑星の探査を目的として2007年9月に打ち上げられ、2011年7月から1年間はベスタを、2015年には準惑星として分類されているケレスを観測する予定となっている。

そのドーンがベスタへの最終接近のフェイズに入った。現在ドーンはベスタから121万km(地球〜月の距離のおよそ3倍)の距離に位置しているが、最終的には1万6000kmまで近づいてベスタの重力に捕まり、その周囲を回ることになる。

小惑星ベスタは小惑星帯の中で4番目に大きな天体で、V型小惑星という分類をされており、HED隕石(注1)と呼ばれる、一度溶けてから再び固まった分化隕石の母天体だと考えられている。このためベスタは地球と同じような分化した層構造を持っていると考えられ、初期太陽系の微惑星(注2)について調べる上で重要な天体である。

一方ケレスは2006年に小惑星から準惑星へと分類が変わった天体で、小惑星帯の中で最も大きくて重い天体である。G型もしくはC型小惑星に分類されており、表面は炭素質隕石(注3)と似ているが、内部には岩石の核や氷のマントルがあるのではないかと言われている。

地球からの観測では、ベスタには衛星の存在は確認されていないが、ドーンはまずベスタの周りを回る小天体がないかどうか探査を始める。その後ベスタを周回する軌道に入り、ガンマ線や中性子線の検出器(注4)を立ち上げ、ベスタ起源でない外からの宇宙線の測定を行う。同時に可視光、赤外線のマッピングカメラの較正も行う予定だ。

ドーンはこれまで詳細な調査が行われていなかった小惑星と準惑星の表面組成や地形図、内部構造を調べ比較する。観測結果から、初期太陽系からどのように惑星が形成されていったのかを解明する手がかりが得られると期待されている。

注1:「HED隕石」 ハワーダイト(Howardite)、ユークライト(Eucrite)、ダイオジェナイト(Diogenite)の頭文字を取って付けられた隕石の総称。表面スペクトルのタイプが小惑星ベスタのものとよく似ているため、ベスタから来た隕石だと考えられている。

注2:「微惑星」 初期太陽系ではまず微惑星ができて、微惑星同士が合体することで惑星が形成されたと考えられている。大きな小惑星はこの微惑星の名残であると考えられている。

注3:「炭素質隕石」 隕石のうち、組成上で比較的炭素に富んでいるもの。隕石全体が溶けるような熱による変成を受けておらず、初期太陽系の姿をとどめた始原的な隕石と考えられている。

注4:「ガンマ線や中性子線の検出器」 ガンマ線検出器では特性ガンマ線を検出することで表面の元素組成を、中性子線検出器では表面の水の存在量を把握する。