地球観測衛星「だいち」が運用終了
【2011年5月12日 JAXA】
地球観測衛星「だいち」(ALOS)が12日午前、運用終了となった。2006年の打ち上げ以来、寿命を超えて地形調査や災害地域監視などで活躍し続けたが、4月22日に電力異常が発生し復旧が試みられていた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、陸域観測技術衛星「だいち」に電力異常が発生した4月22日以来約3週間にわたり衛星との交信を試みてきた。しかし交信復旧は不可能と判断し、送信機とバッテリーを停止するコマンドを5月12日午前10時50分に地上から送信、これをもって運用終了した。機体は大気抵抗により高度が下がり、数十年のうちに大気圏に突入する見込みだ。
同機構では、これまでに入手できたデータを元に電力異常の原因について引き続き調査・報告を行っていく。また、後継機の打ち上げは2年後に予定しているという。
「だいち」は2006年1月24日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット8号機で打ち上げられ、設計寿命3年、目標寿命5年を超えて地球観測に関する多くの成果をあげてきた。主な実績・成果は以下の通り。
- 全世界を観測し、5年間で650万シーンを撮像
- 災害緊急観測活動による貢献:
- 要請に基づき年間約100件の大規模災害を観測し、国内外へ情報提供(2008年5月12日に起きた中国・四川省地震の際に中国から感謝状を受領)
- 災害発生時の撮像に加え、平時のハザードマップ作りや活火山モニタリングなどにも貢献
- 東日本大震災では400シーンの撮像を行い、10府省・機関へ情報提供し、政府の情報集約に貢献
- 「だいち」がこれまで海外の大規模災害へ積極的に対応してきたことにより、東日本大震災では、「国際災害チャータ」や「センチネルアジア」(各国宇宙機関による衛星観測の災害時協力体制)による約5,000シーンの提供を海外から受けた
- 国土地理院での2万5千分1地形図の作成・更新に「だいち」データが利用され、また、アフリカ諸国の地図作成にも利用
- ブラジルの森林伐採監視(ブラジルから感謝状を受領)、世界銀行との協力(気候変動の影響監視)など、地球環境分野でも貢献