ESOのオメガカメラがファーストライトでオメガ星雲を観測
【2011年6月10日 ヨーロッパ南天天文台】
ヨーロッパ南天天文台がチリに建設していた、サーベイに特化した望遠鏡VSTが完成し、ファーストライトで撮影した「オメガ星雲」M17の画像が公開された。VSTは今後数年間で南天の詳細観測を行う予定である。
チリにあるアタカマ砂漠は世界でも有数の天体観測に適した場所であり、日本を含む国際チームが建設を進めている電波望遠鏡群のALMAやヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTもこの場所に置かれている。
このたび、ESOが建設していた南天のサーベイ観測に特化した望遠鏡VSTが完成し、そのファーストライトの画像が公開された。VSTは口径2.6mの望遠鏡で、可視光線領域で満月2個分の視野を持つ2億6800万画素の「オメガカメラ」を搭載している。
ファーストライトの観測天体として選ばれたのは、カメラと同じ名前を持ついて座のM17「オメガ星雲」(「白鳥星雲」ともいう)である。天の川銀河の中心近くにあり、ガスやダスト、若い星の活発な活動が行われているところだ。次に公開する画像は、ケンタウルス座の「オメガ星団」を予定している。
ESOはVISTAと呼ばれるサーベイ望遠鏡を持っているが、これは赤外線領域をとらえるもので、可視光線を撮影するVSTと組み合わせていっそう活躍することが期待される。
VSTは今後5年間で3つのサーベイプログラムを実施する予定である。1つ目は「KIDS」と呼ばれるプログラムで、天の川から離れた領域を撮影し、ダークマターや銀河進化の理解、遠方の銀河やクエーサーの探索を目的としている。
2つ目は「VST ATLASサーベイ」で、空の広い領域を撮影し、VLTや他の望遠鏡とも協力してダークエネルギーの理解を進めることが目的となっている。
3つ目は「VPHAS+」と呼ばれるプログラムで、天の川銀河の中心面を撮影し、天の川銀河の構造や星形成の歴史を解明することが目的となっている。