39億年の彼方から届いたブラックホールの「輝き」
【2011年8月25日 NASA/JAXA】
NASAのX線宇宙望遠鏡「スウィフト」がりゅう座の方向に突然強いX線を出す天体を発見し、ISSに搭載された日本の全天X線監視装置(MAXI)とともに詳細を観測した。電波望遠鏡を用いた追観測が行われた結果、これは銀河の中心にあるブラックホールが恒星を飲み込んだ瞬間を世界で初めて捉えたものであることがわかった。
今年3月の終わり、米・ペンシルバニア州立大学のデイビッド・バロウズ教授らがNASAのX線宇宙望遠鏡「スウィフト」で、突然現われた非常に強いX線源を観測した。
国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されている日本の全天X線監視装置(MAXI)チームの河合誠之氏(東京工業大学教授)、根來均氏(日本大学准教授)らが知らせを受けて同装置のデータを調べたところ、今回の活動が始まるまでX線源は存在しておらず、「スウィフト」による発見の数時間前からX線が検出されていたことがわかった。その後、この天体は「Swift J1644+57」と名付けられた。
当初、これはガンマ線バースト天体で、すぐに暗くなると思われた。しかしなかなか暗くならず、多くの天文学者が探し求めていた現象、「銀河中心にあるブラックホールに恒星が飲み込まれた」ことによって発生したX線を見ていると考えられるようになった。アメリカの電波望遠鏡群で観測したところ、暗いながらもX線源と同じ位置に銀河が見つかり、このX線の正体と銀河の存在が結びついた。地球からこの銀河までの距離はおよそ39億光年である。
ブラックホールに恒星が近づくと、その強い重力によって星がばらばらになり、ブラックホールへと落ち込んで行く。このとき、ブラックホールの周りに円盤を形成し、円盤の極方向にジェットを形成することが知られている。今回のX線もこのジェットからのものだろう。電波はジェットが星間空間に出る時に発生するのに対し、X線はブラックホールのすぐそば、ジェットの発生元から出ていると考えられている。
電波望遠鏡の観測結果によると、電波を発している領域は光速の半分の速度で広がっている。このようすを追えば、X線の発生源だけでなく、ブラックホールから外側に向かってどのような流れが存在するかを確認することができるかもしれない。