惑星誕生の場所に大量の水が存在?
【2011年10月27日 ESA/NASA】
うみへび座TW星を取り巻く原始惑星系円盤を赤外線天文衛星「ハーシェル」で観測したところ、ダストに存在していた氷から発生した水蒸気がとらえられ、地球の海の数千倍もの水が存在していることがわかった。
うみへび座TW星は地球から約176光年離れたところにある。生まれてから500万〜1000万年程度の恒星で、その材料となったちりやガスの円盤がまだ周囲に残る、形成の最終段階の原始星だ。地球のような惑星は、かつては太陽の周囲にも存在していたこのような円盤の中で生まれたとされている。
赤外線天文衛星「ハーシェル」がこの円盤を観測したところ、絶対温度で100度を下回るような低温の水蒸気(注)が存在しているのを発見した。ダストにある氷が原始星からの紫外線によって水蒸気になっていると考えられる。
この観測データと過去の研究結果とを組み合わせてシミュレーションをしたところ、惑星が形成されると考えられる領域に地球の海の数千倍もの水が存在していることがわかった。
これらの水はダスト中で氷として存在し、それらが合体することで彗星が形成され、惑星の水の起源になった可能性がある。できた彗星は惑星に降り注ぎ、海を形成するかもしれない。地球の海の水についても、その起源は彗星であるという説もあり、今回の研究結果はその説を支持するものとなっている。
研究グループでは、うみへび座TW星以外の3つの星についても観測を行う予定で、今回と似たような結果が得られるだろうと予想している。太陽系以外の惑星がどのようにして水を持ったのか、という問題を解決する手がかりとなるかもしれない。
注:「低温の水蒸気」 水を構成する水素原子にはスピンと呼ばれる物理量によって、オルソ(ortho-)とパラ(para-)という2つのモードがあることが知られている。宇宙空間のような低温の環境下では、このオルソとパラの割合から温度を求めることができる。