地球の水は彗星から? 彗星の中に地球と同じ組成の水を発見
【2011年10月6日 NASA/ESA】
ハーシェル宇宙望遠鏡が、カイパーベルトを起源とするハートレー彗星(103P)のコマを観測したところ、その水の水素同位体比が地球の海の値と非常に近いことがわかった。原始地球に水を運んだものは隕石か彗星か、という議論に一石を投じそうだ。
地球の表面のうち約7割を覆い、生命の基本ともなっている水。しかし、これらの水は一体どこから来たのかというのは、実はまだよくわかっていない。原始地球は形成されたときには非常に高温な環境で、現在表面を覆っているような水はこの後に外からやってきたと考えられている。
この「水の起源」を考えるときに強力なヒントになるのは「同位体」だ。同位体とは同じ元素で中性子の数が異なるものを指す。水の場合には、陽子と電子が1つずつの普通の水素と、それに中性子が1つくっついた「重水素」の比率で起源を考えることが多い。
彗星の水素同位体比を見ると、オールトの雲(注1)を起源とすると考えられている多くの彗星では地球の水よりも2倍重い(重水素の量が2倍もある)水が発見されてきた。このため地球の水の組成(水素同位体比)を作るためには、彗星が起源となりうるのは全量の10%以下で、ほとんどは小惑星が主な起源だろうと考えられてきた。
しかし、ハーシェル宇宙望遠鏡がカイパーベルト(注2)を起源としていると考えられているハートレー彗星(103P)のコマ(注3)を観測したところ、水素同位体比は地球の海のものと非常に近い値を示すことがわかった。つまり、地球の海の起源として彗星の水が大部分を占めていた可能性があることを示唆しているが、実際どうなっているのかはまだよくわかっていない。
カイパーベルトを起源とするような他の彗星でも同じことが言えるのか、それを確かめるために「ハーシェル」を用いた観測が今後も続けられる予定である。
注1:「オールトの雲」 太陽系の最遠部(2万〜10万天文単位)には、多くの長周期彗星がやってきている「彗星の巣」が球状に存在していると考えられている。この「彗星の巣」をオールトの雲と呼んでいる。
注2:「カイパーベルト」 海王星(約30天文単位)よりも遠方にある小天体の総称で、「海王星以遠天体」「太陽系外縁天体」などとも呼ばれる。オールトの雲と違い、その天体の多くは黄道面の近くに存在しており、ここからできる彗星は短周期衛星となる。
注3:「コマ」 彗星の核から吹き出した中性のガスやダスト(ちり)がぼんやりと見える部分。