ハートレー彗星に最接近した、探査機ディープインパクト
【2010年11月5日 JPL(1)/(2)】
米国東部夏時間(以下同様)11月4日午前9時59分(日本時間同日22時59分)、探査機ディープインパクトがハートレー彗星への接近通過に成功した。ディープインパクトが撮影した画像からすでに彗星の体積が明らかになっており、今後は表面から噴出している物質に関する情報を得るために観測データの分析が進められる。
探査機ディープインパクトがハートレー彗星(103P)への接近を開始したのは、3日午後4時(日本時間4日5時)のことだ。それと同時に、探査機に搭載されている2つの撮像器が彗星の核へと向けられ、その1時間後に撮影が始まった。
続いて、4日午前9時59分(日本時間22時59分)に探査機は彗星への接近通過を行い、迫力ある画像を撮影した。初期計測によると、最接近時の距離はほぼ事前の計算どおりの約700kmであった。その際撮影された画像(右2枚目)には、彗星の核から噴き出すジェットなどがはっきりととらえられている。
また、画像をもとにした計算から、ハートレー彗星の体積は探査機ディープインパクトが一番最初に観測したテンペル彗星(9P)の100分の1であることが明らかになった。そのほかさまざまな新事実が今後の分析で明らかになるだろう。
EPOXIミッションの主任研究員である、米・メリーランド大学カレッジパーク校のMichael A'Hearn氏は「初期観測の結果から、核に見られる個々の特徴と彗星の活動とを初めて結びつけることできるかもしれません。わたしたちの期待どおり、探査機から送られてきた画像には彗星に関するデータが詰まっています」と話している。また、科学ミッション局の副長官をつとめるEd Weiler氏は「探査機は、史上もっとも広範囲に及ぶ彗星の観測を行ってくれました」とコメントしている。
なお、NASA ジェット推進研究所でEPOXIのプロジェクトマネージャーをつとめるTim Larson氏は「宇宙空間を移動中の彗星にこの距離まで迫れたのは、ミッション・チームのスキルの証です。送信されてくる画像を見るのはとてもうれしいのですが、わたしたちには、まだやらなければならないことがあります。今後3週間はまだ撮像が続きます」と話している。
EPOXIミッション
2005年1月に打ち上げられた探査機ディープインパクトは、同年7月に衝突機を放出してテンペル彗星(9P)へ衝突させ噴出物を観測した(「ディープインパクト計画」)。テンペル彗星(9P)への衝突実験を終えたあと、同探査機は「太陽系外惑星の観測と解析ミッション(EPOCh)」を実施して2008年に終了。続いてハートレー彗星(103P)への接近通過ミッション「ディープインパクト延長探査(DIXI)」を実施。
EPOXIとは、「ディープインパクト計画」後に行われた2つのミッション「EPOCh」と「DIXI」を合体させた略称のこと。探査機名「ディープインパクト」はそのまま引き継がれている。