「WISE」とハッブル宇宙望遠鏡がとらえたハートレー彗星

【2010年10月8日 NASAHubbleSite

探査機ディープインパクトのハートレー彗星(103P)への最接近に先立ち、赤外線による全天観測を続けているNASAの赤外線天文衛星WISEとハッブル宇宙望遠鏡(HST)が同彗星を観測した。


《「WISE」が赤外線でとらえた、ハートレー彗星の長い尾》

(WISEによるハートレー彗星(103P)の赤外線画像)

WISEによるハートレー彗星(103P)の赤外線画像(撮影:2010年5月)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA )

NASAの探査機ディープインパクトはEPOXIと呼ばれるミッションの一環として今年11月4日にハートレー彗星に最接近し、史上もっとも詳細に彗星の姿をとらえる予定だ。

それに先立ちWISEは、ハートレー彗星(103P)の長く伸びる尾や、これまで太陽に接近・通過するたびに彗星が軌道上に残してきたちりなどを赤外線の波長で観測した。同彗星の尾がこれほど広範囲にとらえられたのは初めてのことだ。

NASAジェット推進研究所のJames Bauer氏は「WISEによる赤外線データは、探査機ディープインパクトによる可視光や赤外線の波長による観測を補うものです。WISEが国全体を見渡し、一方で探査機ディープインパクトが首都を訪ねるようなものです」と話している。

また、WISEの観測データから、彗星の核の大きさや周囲を取り巻くちりの大きさなどが新たに見積もられることになっている。

Bauer氏は「わたしたちは、彗星が太陽に向かって接近するにしたがって、どのようなふるまいを見せるのかを知りたいのです。WISEの画像は、“太陽へ接近しながら時間とともに変化する彗星の姿”というパズルを完成させるための重要なピースの1つなのです」と話している。

なお、凍った彗星の中に隠れている太陽系の起源に迫る情報を得るため、WISEだけでなく地上や宇宙の望遠鏡も観測に参加している。

《HSTもハートレー彗星を撮影》

(HSTによるハートレー彗星(103P)の画像)

HSTによるハートレー彗星(103P)。元画像は白黒、青色は明るさの値から変換した擬似カラー(撮影:2010年9月)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and H. Weaver (The Johns Hopkins University/Applied Physics Lab))

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によるハートレー彗星の画像も公開された。この画像も、来月4日に予定されている探査機ディープインパクトによる最接近時の観測に役立てられる。

観測で得られたデータの分析から彗星の核は直径約1.5kmと見積もられ、以前の計算と一致する結果となった。また、太陽への接近に伴って彗星の活動がひじょうに活発な状態であることやコマの形が目立って均一であることも示された。一方で、木星族彗星(軌道上で太陽からもっとも遠い点が木星付近にある短周期彗星)のほとんどに見られる表面からの高速のガスの噴出(ジェット)は見つかっていない。

HSTに搭載されている分光器「COS」と宇宙望遠鏡撮像分光器「STIS」による観測によって、他の方法では得られないような化学的な組成に関するデータが得られるだろうと期待されている。というのも、HSTのチームは、一酸化炭素と二原子硫黄からの放射を検出することを具体的な目標にしているからである。これらの分子はほかの彗星には見られるのだが、ハートレー彗星からはまだ観測されていない。

アストロアーツ注:ハートレー彗星は10〜11月にかけて最大4等級まで明るくなると予想されています。見つけ方や観察、撮影方法などについては、『【特集】ハートレー彗星(103P)』を参照してください。