ディープインパクトの探査で彗星表面に水の氷を確認

【2006年2月24日 Brown University News NASA Mission News

彗星の主成分が氷(水の氷)であることはよく知られているが、これまで彗星核の表面で氷が見つかったことはなかった。昨年7月、NASAの探査機ディープ・インパクトがテンペル彗星(9P/Tempel)に衝突したときは、内部に閉じこめられていた氷などが一瞬にして蒸発してあたかも花火のような様であった。しかし衝突とは別に、テンペル彗星には最初から氷が露出していた部分があったという決定的証拠が、ディープ・インパクトの観測結果から明らかになった。


(表面に水氷が見られる3つの小さな領域を捉えた画像)

表面に水の氷が存在すると見られる3つの小さな領域を捉えた画像。クリックで拡大(提供:NASA)

ディープ・インパクト探査機に搭載されたカメラは、テンペル彗星の表面に3つのくぼみをとらえた。それぞれのくぼみの中心部分に、氷が存在すると見られている。テンペル彗星の表面積はざっと120平方キロメートルだが、そのうちこの氷が占めるのは、たった0.03平方キロメートル(3万平方メートル)だ。しかも、そのうちスケートリンクのように純粋な水の氷だけでおおわれているのはたったの6%。残る部分には、ちりが積もっている。

赤外線分光器による観測から、どうやらこの氷は、もともとテンペル彗星の内部にあったものが時間と共に表面に露出したのだと見られる。ディープ・インパクト観測チームによれば、時折彗星表面で爆発的にちりと蒸気が吹き上げられることによって、今回観測されたような氷は、彗星頭部を包むコマ、さらには尾を構成するガス成分の供給源になるのだと言う。

「今や、私たちが見ているのは、刻一刻と表面の様子が変化する、地質的に活発な天体であると言ってもいいでしょう。これからは、表面における物質の噴出がなぜ、そしてどのように起きるか探りたいと思います」と研究チームの一員である米・ブラウン大学のシュルツ(Peter Schultz)氏は述べた。人為的に彗星表面に変化を及ぼすのがディープ・インパクト計画の目的だったが、元々彗星の表面は案外活動的である、というわけだ。

同じくブラウン大学のサンシャイン(Jessica Sunshine)氏は語る。「彗星における水の移動や水が表面へ供給される仕組みを理解することは、これらの天体を1つの系として、そして地球における水の源の候補として、理解することにつながります。彗星には大量の有機物もあります。つまり、生命にとって欠かせない二大要素が存在しているのです」

実際、7月4日の衝突後の観測で、テンペル彗星の内部に有機物が豊富に存在することが確認されている。

劇的な衝突から半年が過ぎたが、今後もまだまだ、データの解析が進むと共に天文学界にインパクトが与えられることだろう。

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