彗星探査機スターダストの捉えたウィルド彗星は、汚れた雪の塊ではない
【2004年6月28日 JPL News Release】
NASAの彗星探査機スターダストは、人類初となる彗星粒子のサンプルリターンという使命を果たすべく、現在地球へ向けて帰途の途中にある。このスターダストが捉えたウィルド彗星(81P/Wild)の画像から、汚れた雪の塊という従来の彗星のイメージに反して、深いクレーターや険しい崖、吹き出すジェットなどの興味深いユニークな特徴が明らかにされた。
初めて画像に捉えられたのは、100m級の高さに隆起した尾根や150mの深さのクレーターなどだ。いくつかのクレーターの中心には、丸いくぼみがあり、ごつごつとした噴出物がみられるという。これらの特徴は、数十億年前、ちょうど地球に最初の生命が誕生したころのものだと専門家は考えている。
中でも専門家を驚かせたのは、彗星表面から放出される粒子のジェットだ。その数は予想より多く20個以上も見つかっている。このジェットの速度は時速数百キロメートルにも達し、ジェットに含まれる粒子の数は毎秒百万個にのぼったということだ。このような激しいジェットは、氷で覆われた彗星の表面が太陽の強い光を受けた際、液体になる段階を経ずに氷からガスへと急激に姿を変えたために発生したものだと考えられている。
1999年7月に打ち上げられたスターダストは、2006年の1月に彗星に含まれていた分子や星間ダストを詰めたカプセルを地球に持ち帰る予定となっている。彗星は、生命の源ともいえる炭素や水を運ぶ天体と考えられているため、専門家はサンプルの詳しい分析に大きな期待を寄せている。