銀河の衝突現場に星の芽を観測
【2011年11月24日 国立天文台】
2つの銀河が衝突している「アンテナ銀河」の観測研究で、星の材料となるガスが濃く集まり星の大集団が生まれつつある現場や、巨大ブラックホールがひそむと思われる銀河中心核へのガスの流入が見つかった。
「アンテナ銀河(触角銀河)」は、からす座の方向およそ7000万光年先にあり、2つの渦巻銀河「NGC 4038」と「NGC 4039」が衝突している現場だ。数多く見つかっている衝突銀河の中で最も近い距離にあるため、こうした天体の研究に格好の対象として知られている。
東京大学や国立天文台の研究者を中心とする研究チームが、ハワイにある米国のサブミリ波干渉計(SMA)を用いて、この「アンテナ銀河」に含まれる分子ガス雲の分布を細かく調べた。分子ガスは主に水素からできている星の材料で、このガスが重力で集まって凝縮した部分から星が誕生する。
観測の結果、銀河の中心だけでなく銀河同士がぶつかっているエリアでも、局所的に分子ガスの温度と密度が高い領域が見つかった(画像2枚目)。銀河同士の衝突が刺激となって銀河内のガスから星がたくさん生まれると考えられているが、まさにその直前の現場というわけだ。近い将来、この領域から星の大集団が誕生することが予想される。
また、2つのうち南側の銀河(NGC 4039)の中心部に流れこむ分子ガスの運動も検出することができた。銀河中心へのガスの流入は、中心核にひそむと考えられる巨大ブラックホールの成長にも関連することから、とくに注目される。
今回のようなサブミリ波の観測は、分子ガス雲に含まれる一酸化炭素分子を検出するため、星が生まれつつある領域を調べるのに適している。南米チリに建設中の「アルマ望遠鏡」はサブミリ波観測で飛躍的な性能を持ち(注)、今年9月に初期観測を開始した。研究チームでは、このアルマを用いてさらに詳細なアンテナ銀河の観測を目指している。
注:「アルマ望遠鏡」 サブミリ波のほか、ミリ波での観測も行う。